【ご紹介】一万年生きた子ども 統合失調症の母をもって
『一万年生きた子ども 統合失調症の母をもって』(著:ナガノハル / 発行:現代書館)
現代書館の編集部からご恵贈いただきました。
年末年始の読書にオススメします。
表紙のイラストにあるような柔らかい文体です。
年末年始の読書にオススメします。
表紙のイラストにあるような柔らかい文体です。
精神疾患のある母をもつ漫画家による私小説的エッセイです。
妄想にとらわれ何度も失踪する母。
連れ戻しに行く8歳の私。
家にいない父。
平穏なふりをして過ごす学校生活。
子どもらしく生きることを奪われた苛烈な内情を筆者は「一万年生きた子ども」と表現します。
その後、当事者会との出会いを経て自身の「病」についても豊かに表現されています。
筆者のブログにもある一節をご紹介します。
それはひとえに精神障害者の母を持ち、常に彼女の機嫌をうかがわなければ生活すべてが壊れてしまうというような場所に育ったからです。今はそんな必要はないし、ここは安全な場所だから人の顔色はうかがわなくていいと言われても、人の顔色を見ることが生き延びることに直結していた思考回路はすぐにはなくなりません。というか、生涯なくなりません。
でも、なくならないからといって絶望しなくてもいいのです。頭で不安なこと辛いことをいっぱい考えて、それを考えるのをやめなければと自分を責める必要はありません。ただ、反応したときの行動を変えていけばいいのです。
いわゆるヤングケアラーの幼少期の経験談というだけではなく、経験したものを語り、沁みついた思考を分析し、その解を探る試みを追体験することを通じて、「一万年生きた子ども」的なものを多少なりとも心の奥にしまっていることに読者に”さりげなく”気づかせてくれる、素敵な本だと思いました(山田)
▼一万年生きた子ども――統合失調症の母をもって(購入フォーム・現代書館)