【報告レポート】 当事者の視点から期待する―これからの入院制度についての意識調査―
一般社団法人精神障害当事者会ポルケは、「当事者の視点から期待する―これからの入院制度についての意識調査―」を2022年4月23日~5月4日の期間にWEBフォームを通じて精神科・心療内科に現在通院・入院をしている方を対象に実施しました。おかげさまで、220件もの回答を集めることができました。この場をお借りして、ご回答、ご周知等の協力に感謝申し上げます。
これまで本会が行っている当事者交流「お話会」や相談を通じて、精神科病院での入院についての経験や入院制度について様々な考え方が寄せられてきました。精神医療が良いか悪いかといった二項対立ではなく、当事者団体として一人ひとり当事者の声や気づきを広く社会に発信することが必要と考えています。その際、ネガティブな経験が繰り返されないためにどうしたらよいのか、ポジティブな経験はもっと広がるためにどうしたらよいのかといったような観点を留意することが必要と考えています。そのため、今回のアンケート調査では回答者の負担感を考慮しつつ選択式の設問以外に、自由記述の設問を用意しました。
さて、今回の調査結果では医療保障について当事者が重要とするポイントが明らかになりました。最も重要とする項目は、「医師から説明を受けて安心して医療を受けられる」といったインフォームドコンセントに関するものでした。次いで、自分が希望するときに受診、医療を受けられるといった自己決定に関する項目でした。なお、「入院治療は、誰かに強制されるかたちではなく、自分で判断したい」といった考えについての設問では、回答全体の91%から共感を示す回答が示されました。一方で、自傷他害といった緊急性がある場合の非自発的医療を許容する考えについては、共感を示す回答は全体の74%にのぼりました。ただ、その必要性の判断に逡巡する声も多く聞かれました。許容は示しつつも、その範囲を限定したり、尊厳を守る必要性を訴える回答も数多く寄せられており、現行の枠組みからの変更が求められます。「医療保護入院が廃止されても医療が受けられなくなる不安は感じていません。むしろ、医療保護入院によって医療不信になり、かえって医療保障と遠ざかってしまいます」といった切実な回答も寄せられています。
現在、「地域で安心して暮らせる精神保健医療福祉体制の実現に向けた検討会」は大詰めを迎えています。この検討会では、国から初めて医療保護入院の廃止という画期的な文言が示されました。これについては、後日文言の削除がありましたが、修正後の書きぶりを支持する声がおよそ20%と限定的であったのに対して、修正前の書きぶりの「将来的な廃止を視野に入れて縮減に向けて検討」を支持する声が自由記述含めて過半数を超える結果となりました。医療保護入院の廃止については、検討会において当事者の立場だけではなく、家族会の立場の構成員などからも積極的な賛意が示されています。この方向性を本会としても強く支持します。一方で、今回の調査からは、「医療保護入院制度を廃止することは必要としながらも、どうやって医療保護が必要だと考えられる患者をサポートしていくか」「看護師の人員配置を増やすなどの措置も必要ではないか」といったコメントも寄せられています。とても大事な指摘だと考えます。ほかにも、制度の在り方、現場の在り方、地域精神保健福祉のオルタナティブなど多岐にわたる貴重な意見が寄せられています。この報告書資料が各方面で活用されることを切望いたします。ご希望の方は、お気軽に本会までお問い合わせください。
今年の夏には障害者権利条約の第1回目となる締約国審査という大事な局面を迎えます。本会ではこの調査報告を活用しながら、関係諸団体と協力をして当事者の権利擁護、制度作りに向けてアクションを引き続き行ってまいります。今後ともよろしくお願いいたします。
2022年5月6日
一般社団法人精神障害当事者会ポルケ
代表理事 山田悠平
<アンケート調査実施概要>
■回収方法:WEB(Googleフォーム、メールアドレス登録識別を実施)
■募集期間2022年4月23日~5月4日
■回答対象者:精神科・心療内科に現在通院・入院をしている方
■回答数:220件
■実施:一般社団法人精神障害当事者会ポルケ
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▼【概要版報告書】当事者の視点から期待するーこれからの入院制度についての意識調査ー
▼【全掲載版報告書】当事者の視点から期待するーこれからの入院制度についての意識調査ー
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