【活動報告】任意団体「メディア・ガイドライン策定普及プロジェクト」の発足

昨年度から実施している刑事事件におけるメディア報道のあり方を示すガイドラインの策定を目指すプロジェクトが正式に発足いたしました。昨年度までは、事件報道を受けての意識調査、ニュージーランドをはじめ国外の取り組みについての机上調査や厚生労働省記者会での会見などを実施してまいりました。今年度は、精神保健に関係する団体や研究者の方などに参画をいただき、メディアの方へのヒアリングなどをしながら、あり方検討をしてまいりました。下記の通り、2023年11月7日に任意団体「メディア・ガイドライン策定普及プロジェクト」が発足いたしました。この動きは、アンチスティグマのアクションとして取り組むもので、来年以降動きを加速していきたいと思います。応援、ご協力のほどよろしくお願いいたします。

 

設 立 趣 意 書

精神保健は、すべての人にとって大切なものです。人間は感情の生き物であり、誰もが、精神的に満ちたりた時間も、精神的な苦しさや痛みを感じる時間も経験します。また、精神疾患は多くの人が経験するもので、世界保健機関(WHO)によると、今も世界の8人に1人が有しています。自殺による死者数は年間70万人であり、特に若者の間で大きな問題です。一方で、障害者雇用義務の対象に精神障害が加わったり、デジタルデバイスが心の健康見守り機能を実装したりする等、行政、教育、就労、デジタルの分野を超えて、精神保健・ウェルビーイング向上のための前向きな取組みも加速しています。2006年に国連総会で採択された「障害者権利条約」にも精神障害・知的障害が含まれ、日本では2014年の批准以降、「障害者差別解消法」を含む法整備・システム強化が進められています。また、精神保健とウェルビーイングの向上は、2015年の「持続可能な開発目標(SDGs)」や「国連仙台防災枠組」でも優先事項となり、日本を含む各国で様々な実践がなされています。

WHOは、精神保健・ウェルビーイングの向上のためには、正しい情報の提供に基づくアウェアネス向上と、精神障害をめぐる偏見・差別対策が不可欠としています。その際、メディアにおける情報発信・報道は、特に重要な役割を担うものです。例えば、精神保健やそのサービスをめぐる正しい情報がメディアで報じられることにより、多くの人の精神保健向上に寄与します。WHOの「メディア関係者に向けた自殺対策推進のための手引き」により、日本でも、厚生労働省、メディア各社、精神保健福祉関係者、障害当事者団体によるパートナーシップが強化され、自殺報道の在り方が大きく変わったことで、サービスを必要とする人が適切な支援に繋がりやすくなりました。一方で、報じ方によっては、ネガティブな影響があり得る場合もあります。中でも、刑事事件における被疑者が精神科通院歴を持つことや精神障害者保健福祉手帳を所持していることが、事件との因果関係が不明なままに殊更強調されると、精神障害をめぐる偏見や差別が助長されることがあります。これについては、障害当事者団体や家族会、精神保健福祉の関連団体が、改善のための取組みを重ねてきました。精神障害当事者会ポルケが、2019年に大阪市北新地で発生したビル放火火災事件を受けて、精神障害のある人を対象に実施したWEB意識調査の結果においても、メディア報道の重要性が示されています。

このような中、精神障害当事者会ポルケでは、国立精神・神経医療センター精神保健研究所、東京大学等と共に、「精神保健をめぐるより良いメディア報道を目指すための取り組み」を、2022年より始めました。例えば、メディア関係者と障害当事者団体が協働して作成したニュージーランドの「メディア・ガイドライン」を翻訳し、厚生労働省記者会にて公開する等してきました。今後、日本でも、精神保健をめぐる「メディア・ガイドライン」を策定することによって、精神保健の向上と人権保護・促進に資することを目指しています。

この際、精神保健をめぐるアウェアネスを高め、精神保健をめぐる偏見や差別を解決していくためには、分野横断的に専門知や経験知を持ち寄り、メディアと当事者、専門家、実務家間の幅広い協力と連帯を築くことが有用です。メディア・ガイドライン策定普及のプロジェクトをアンチスティグマの象徴的な取り組みとして位置づけ、共同創造(コ・プロダクション)を実践としたいと考えています。立場や考えの違いを認め合い、プロジェクトのプロセスを通じて、21世紀に相応しい今後の精神医療保健福祉に関わる者の連携促進を私たちは体現していきます。

上記の思いに基づき、任意団体「メディア・ガイドライン策定普及プロジェクト」を設立します。

2023年11月7日

設立メンバー一同

代表者 山田 悠平

世話人名簿

氏名 所属
秋山剛 公益財団法人こころのバリアフリー研究会 理事長
井筒節 東京大学大学院農学生命科学研究科准教授
伊東香純 立命館大学 衣笠総合研究機構 生存学研究所 特別招聘准教授
猪島章子 一般社団法人精神障害当事者会ポルケ 事務局員
小幡恭弘 公益社団法人全国精神保健福祉会連合会 事務局長
桐原尚之 全国「精神病」者集団 運営委員
草地仁史 一般社団法人日本精神科看護協会業務執行理事兼政策企画局局長
相良真央 一般社団法人精神障害当事者会ポルケ理事
堀合研二郎 一般社団法人精神障害当事者会ポルケ理事
宮本有紀 東京大学大学院医学系研究科精神看護学分野准教授
山口創生 国立精神・神経医療研究センター 精神保健研究所 地域精神保健・法制度研究部室長
山田悠平 一般社団法人精神障害当事者会ポルケ代表理事
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発足の記念写真

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