【活動報告】マレーシアでのTCI能力強化ワークショップ参加 ― 脱施設化と地域包摂に向けた指標づくり
一般社団法人精神障害当事者会ポルケは、精神社会的障害のある人による国際ネットワーク Transforming Communities for Inclusion(TCI)の正会員として、2025年11月24日〜29日にマレーシア・クアラルンプールで開催される「TCI能力強化ワークショップおよび臨時総会」に参加しました。TCIは、精神社会的障害のある人の権利と地域生活を前進させることを目的とした国際的なアライアンスで、22カ国にメンバー組織を持っています。いずれも当事者が中心であり、国連障害者権利条約に基づく地域包摂、脱施設化、法的能力の保障などを、グローバルな課題として共有しています。
今回のワークショップの中心となるのが、TCIが開発した「コミュニティ包摂指標ツール(Community Inclusion Indicators Tool: CII-T)」です。CII-Tは、各メンバー団体が自分たちの地域で進めている取り組みを、CRPDに沿って記録・振り返るためのモニタリングツールとガイドブックであり、TCIはこれを用いた能力強化研修を全正会員向けに実施しました。
ワークショップでは、このCII-Tを使って、住宅、支援サービス、所得・社会保障、医療・ケア、危機支援などがどの程度「地域で当たり前に暮らす権利」(CRPD第19条)を支えているか、どこにギャップがあり、どの部分を優先的に変えていくべきかなどを当事者自身が指標にもとづいて整理し、各国・各地域の行動計画に落とし込みのイメージを共有しました。
あわせて、TCIが重点分野として掲げる「脱施設化」についても、脱施設化ガイドラインとTCIの戦略枠組みを踏まえながら、進捗を測る指標づくりと、その指標を起点にしたアクションプランの検討が行われました。長期入院や入所施設を前提とせず、地域生活への移行と支援をどのように設計し直していくかは、障害者権利条約第19条の実施に直結するテーマであり、日本を含む多くの国で喫緊の課題です。TCIの戦略枠組みでは、コミュニティ包摂、脱施設化、人権モデルへの転換、法的能力と司法アクセスといった柱ごとに、2030年までの目標とそのためのステップを継続的に行うこととなりました。
今回のマレーシアでの会合は、こうした長期目標を、各国の現場の経験と指標データにもとづいて具体的な行動計画にしていくための場とも位置づけられました。障害者権利条約の実施は、精神障害のある当事者同士が国境をこえてつながり、共通の指標を使って現状を可視化し、脱施設化と地域包摂に向けた行動計画を一緒に描いていくことが不可欠です。今回のマレーシアでのTCI能力強化ワークショップへの参加を通じて、日本の経験を国際的な議論と結びつけると同時に、得られた知見やツールを日本の地域での実践に還元していきたいと思います。今後、コミュニティ包摂指標・脱施設化指標の紹介、日本での活用の試みなどについて、あらためて本ホームページ等で発信していく予定です。





