【活動報告】精神障害・発達障害のある人の鉄道交通利用に伴う 意識調査報告書発行(公益財団法人交通エコロジー・モビリティ財団助成事業)
近年、公共交通における障害者支援の制度が大きく進展しています。一般社団法人精神障害当事者ポルケは、東京新聞やNHK社会部から取材を受けるなどして、精神障害のある人の鉄道利用に関するニーズや交通費減免への広がりへの期待等についての見解を述べながら、関係各所に制度導入についての要望を行ってきました。2025年4月からJR各社をはじめ多くの鉄道会社で、精神障害者保健福祉手帳所持者に対する鉄道運賃の割引制度が開始されます。従来、身体障害者や知的障害者には割引が適用されていましたが、精神障害者は対象外だったため、今回の拡大は当事者にとって大きな関心となっています。また、2024年4月施行の改正障害者差別解消法により、民間事業者による障害者への「合理的配慮の提供」が努力義務から法的義務へと強化されました。交通事業者もこの法律の対象であり、障害のある人が円滑に公共交通を利用できるよう必要な配慮を提供する責務を負うことから、精神障害のある人の鉄道利用のしやすさの期待が高まっています。
しかし、精神障害や発達障害といった一見わかりにくい障害については、社会の理解や公共交通機関での合理的配慮の提供が未だ十分とは言えません。過去の交通バリアフリー施策や調査研究は、主に身体障害者や高齢者の物理的なバリア解消に焦点が当てられてきました。一方で、精神障害や発達障害のある人が公共交通利用で直面する困難については取り残されがちであり、合理的配慮の具体策も模索段階です。国土交通省による「障害当事者及び交通事業者に対するアンケート」集計結果」(2021年2月)においても、知的・発達障害のある人は「付き添い者がいれば利用する」割合が高いのに対し、精神障害のある人では「一人で利用する」もしくは「利用しない」との回答が多いという結果が報告されています。これは、ガイドヘルパーなどの福祉サービスの利用の広がりが限定的であることや、精神障害のある人の中には周囲に助けを求めづらく自力で何とか利用している人や、そもそも何らかの事情で鉄道利用自体を断念してしまう人が少なくないことを示唆しています。
こうした状況を踏まえ、当事者が自らの経験に基づいて回答する形をとることで、従来の行政や事業者主導の調査では拾い上げにくかった生の声やニーズを明らかにするとともに、今後の交通事業者の精神障害・発達障害のある人向けの研修やサービス提供のあり方について提言を目指して実施をしました。本調査は2024年12月から2025年1月にかけてGoogleフォームを用いたオンラインで行われ、当初目標の100名を大きく上回る全国44都道府県から357名の有効回答を得ました。ご協力いただいた皆様、ありがとうございました。
調査結果については下記のPDFデータより閲覧することができます。