【活動報告】第102回お話会レポート(他人と比べてしまうこと、家族や身近な人との距離感など)
まだまだ猛暑が続く8月30日、東京都障害者福祉会館で第102回お話会が行われました。今回は、初参加の方2名を含む16名の参加がありました。会場に入ると、皆まずは一息つき、冷たい水を飲むなどしてクールダウンしていました。涼しい秋が待ち遠しいです。
◇他人と比べてしまうこと
「特に同世代の人と自分を比べてしまい、不安になったり自己嫌悪に陥ったりしがち。皆はこういった負の感情とどのように向き合っているのか聞きたい」という投げかけがありました。
同じような経験のある人が多く、参加者はその発言に深くうなずきながら聞いていました。
「考えても落ち込むだけだし、周りの人たちも『比べなくていい、あなたはあなただよ』と言ってくれる。頭では分かっている。でも、同世代の友人たちはすでに就職しているのに、自分は十分に働けていないと感じるうえに、また体調が悪くなるかもしれないという不安もあり、思い詰めてしまう。今できることはやっているが、安定した職に就くなど、根本的な解決がないとこの不安はなくならない気がする」。
この言葉に対して、少し上の世代の参加者たちから、自身の経験や、今どのように考えているかが語られました。
「たとえば就職しても、もっと上を目指さなくてはならないとか、人と比べる限りそのような不安はつきまとう。昔に比べて自分は、他人と比べない生き方になったと思うが、それでも全く比べないかというとそうではない。『普通』と比べて焦る気持ちはすごくよく分かる」。
「自分は主治医から『仕事をする時間は一日に○時間まで』と言われている。そんな自分と、フルタイムで働いている人とを比べてしまいそうになる。でも、一人一人体格が違うように、人それぞれできることも違うのだと考え、自分ができることをやろうと思うようにしている」。
世の中の「普通」の基準は、心身ともに元気な人を想定していることが多いと感じます。特につらい状態にあるときには、その基準に合わせられる人が多数派で、その中に入れない自分はダメなのではないかと不安になり、無理に合わせようとしてしまいがちです。しかし、参加者の言葉のとおり、本来できることは一人ひとり違うのが当たり前なのです。
「“今”の自分をしっかり認めることが大事だ」という意見も出されました。
「最近、あるセミナーに参加し、小さなことでも今日自分ができたことを振り返って褒めるのが大事だと聞き、納得できたので実行している。すると、少しずつ気持ちが落ち着いていく感覚がある」「今は働いているのだが、毎週、一週間働けた自分を褒めることにしている」という言葉に対し、はじめに質問をした人からは、「確かに、自分もアルバイトに行った日は自分を褒めたい。自分を褒められるのは自分しかいないと思いました」との言葉が出されました。
これまでどうにか皆と一緒にやってきたのに、病気や障害によって、皆の歩みと自分の歩みが違うものになってしまったと感じることがあります。そのとき、皆と一緒にいられないつらさだけでなく、皆と一緒に進めない自分を否定してしまう苦しみも生まれます。私たちの苦しみは、他人との比較による評価が重視されがちな環境にあることも一因かもしれません。
それでも、これからも生きていくのは自分自身です。自分にとって生きやすい環境を、自分なりに作っていくことも大切だと改めて感じました。
◇家族や身近な人との距離感
「体調の波もあり自分の範囲を守りたいのだが、家族にも精神疾患があり、どんどん自分を頼ってくる。ある時、『今はきついからこれ以上聞けない』と伝えたら『見捨てるの?』と言われてしまい、罪悪感をもちとてもつらかった。皆は家族との距離感をどう考えているのだろうか」という話題が出されました。
家族とのかかわりは、私たちにとっていつでも大事なテーマです。すっきりと解決することはなかなか難しいかもしれませんが、お話会のような場で共有し続けられることは、とても貴重です。
家族に関しては、皆それぞれに思うことがあり、次々に言葉が出されました。
「今は親と二人暮らしだが、ずっと不仲で、今日ここに来るのも直接伝えずメモを置いてきた」
「自分も以前は親と反目していて、しばらく必要なやり取りはメモでしていた。でも、メモだと要点だけを伝えるので、感情的にならずケンカがなくなった」
その人は、年月を経て次第に関係が良くなったそうです。良い関係を保つためには、当時はとても距離を置ける状況ではないと感じたり、自分が冷たいのではないかと迷ったりしながらも、あえて離れることが必要な場合もあるのかもしれません。
一方で、「別居している家族に連絡することがあったが、疲れていたのでラインにしたら、結局すぐに電話がかかってきて、話してぐったりした」という人もいました。やはり、正解がなく日々悩んでしまうのが家族関係なのだと感じます。
また、グループホームに住む参加者からは、世話人さんとの関係に悩んでいるという話もありました。
「ある世話人さんの言葉の端々から嫌味を感じることが重なっていたので、ついぼそっと愚痴が出てしまった。そうしたら、その言葉をとらえられてすごく怒られてしまい、自室で泣いていたら、今度はそのことについて話し合いをする必要があるから部屋から出てくるように言われ、本当につらかった」
近い関係ほど、うまくいかないことはよくあります。ただ、その原因が当事者側にあるとされたり、時に病状が理由にされたりするのは、私たちにとってつらいことです。
お話会での共有が、それぞれの家族や身近な人とのより良い関係につながっていくことを願っています。
◇おわりに
会の最後には、
「最近ではAIに悩みを相談したりもするが、やはり生の人の声を聞きたいと思っていたので、参加して良かった」
「ここでは支援者以外の人と会えるのが良い」
といった気持ちが共有されました。
お話会が、安心して仲間と出会い語り合える場の一つであるよう、これからも皆で続けていきます。この取り組みは、公益推進協会釋海心基金の助成により実施をしています。(相良)