【情報提供】臨床精神薬理 第28巻11号寄稿ー精神科領域におけるPPIの深化——経験知と専門知による医療の革新
星和書店発行の『臨床精神薬理 第28巻11号』に「精神科領域におけるPPIの深化——経験知と専門知による医療の革新」を当会代表理事の山田悠平が寄稿しました。
患者・市民参画(PPI: Patient and Public Involvement)は、障害者権利条約に掲げられた「私たちのことを私たち抜きに決めないで」の理念に鑑みても、医療や研究の計画・実施・評価に当事者が主体的に関与する取り組みとして注目されています。論考では、精神科薬物療法を中心に、当事者の経験知がどのように医療実践を変えつつあるかを具体的事例を交えて論じました。例えば、統合失調症薬物治療ガイドライン2022への当事者委員の提起が新たな臨床疑問(CQ)の追加につながったこと、またコロナ禍でのオンライン診療に関するポルケのアンケート結果が国の検討課程で参照されたことなど、当事者の声が実際に制度や政策へと届く変化を紹介しています。さらに、こうしたPPIを一過性の参加で終わらせないためには、合理的配慮を前提とした参画設計と、専門職と当事者がともに企画段階から関わる共同創造(co-production)の視点が不可欠であることなどを述べました。ポルケでは、2025年に「精神障害・発達障害のある人の会合出席に期待される合理的配慮チェックリスト」を作成し、会議時間や休憩、資料提供など具体的な配慮を整理しました。これらの取り組みは、当事者参画の質を高め、精神科医療におけるPPIを文化として根づかせる試みでもあります。PPIは単なる「参加」ではなく「協働」であり、当事者の経験知が専門知と結びつくことで、より本質的な転換が期待されます。今回の寄稿を通じて、PPIの広がりへの期待とともに、その参画の中身こそが問われている現状を社会に共有できればと考えています。


