【情報提供】障害年金の認定をめぐる一連の問題についてー2026年3月現在の状況レポート

障害年金の認定をめぐって相次いで明らかになっている一連の問題について、2026年3月現在の状況をレポートします。障害年金は、障害のある人の地域生活を支える重要な所得保障制度です。その認定過程に不透明さや恣意性への疑念が生じることは、個別の事務処理上の問題にとどまらず、制度の根幹への信頼を損ねかねない重大な事態だと受け止めています。当会は、就労や社会参加がむしろ不支給の理由のように扱われること、本人の生活実態や語りが審査に十分反映されにくいこと、審査過程がブラックボックス化していることに対して、改善の必要性を訴えるため、さまざまなアクションに当事者団体として参画しています。

この問題が広く注目されるようになった背景には、2025年春以降、障害年金の認定をめぐる異変が段階的に可視化されてきた経緯があります。まず、2025年3月13日、共同通信は複数の社会保険労務士の協力による集計をもとに、2024年以降、障害年金の不支給が増えている可能性があり、特に精神・発達障害では不支給割合が前年の約2倍となっていると報じました。その後、4月28日の共同通信の続報では、日本年金機構の内部資料をもとに、2024年度の不支給判定が前年度から大きく増え、約3万人規模に上る見通しや、審査の厳格化が疑われる状況が報じられました。これらの報道によって、障害年金の認定のあり方そのものに対する社会的関心が一気に高まりました。

こうした報道を受けて、2025年5月19日には、公益社団法人全国精神保健福祉会連合会(みんなねっと)、認定NPO法人地域精神保健福祉機構・コンボ、日本ピアスタッフ協会、全国「精神病」者集団、一般社団法人精神障害当事者会ポルケの5団体が、厚生労働省に要望書を提出し、記者会見を行いました。要望書では、本来受給できたはずの人の救済につながる調査と、障害者権利条約の趣旨を踏まえた適切な検証を求めています。当会も、ブラックボックスとなっている支給決定プロセスの改善、社会モデルに根差した制度設計の見直し、そして当事者参画の必要性を訴えました。

その後、厚生労働省は2025年6月11日、「令和6年度の障害年金の認定状況についての調査報告書」を公表しました。この報告では、2024年度の新規裁定における不支給決定数が18,982件、割合で13.0%となり、前年度の11,947件、8.4%から大きく上昇したことが示されました。とりわけ精神障害では、非該当割合が2023年度の6.4%から2024年度の12.1%へ上昇しており、一連の問題提起が公的な調査結果でも可視化された形となりました。もっとも、この報告書の公表で問題が解消したわけではありませんでした。

2025年9月17日、当会はみんなねっと、全国「精神病」者集団、コンボの関係者とともに厚生労働省との懇談に参加し、不支給増加問題について意見交換を行いました。当会はこの場でも、単なる運用上の課題ではなく、制度への信頼そのものを揺るがす重大な事態だと受け止めていること、就労の有無だけで実態より軽く判断されるような運用は制度の趣旨を損なうこと、認定理由や審査過程の見えにくさが不信と諦めを生んでいることを指摘しました。厚労省からは、6月の調査報告書を踏まえた再審査を進め、2025年度内に不支給判定の点検を終えて個別通知を行う予定であることや、認定医の選定方法の見直し、審査会に福祉職を加えるなどの改善策が説明されました。

しかし、2025年12月28日には、共同通信が、日本年金機構の職員が認定医の判定結果を記した認定調書を破棄し、別の認定医に審査を依頼し直していたとする独自報道を配信しました。この報道により、認定プロセスそのものの透明性と公正性に対する疑念はいっそう強まりました。これを受けて厚生労働省は、2026年1月16日、「障害年金における認定調書の取扱いについての調査結果」を公表しました。そこでは、2024年5月以降、認定調書の誤りや疑義を理由に再度同じ認定医に依頼するか、別の認定医に依頼し直した件数が約7,500件あったこと、また別の認定医に依頼し直す際の明確な判断基準が定まっていなかったことなどが示されました。日弁連もこの結果を受けて、第三者による独立した調査や、障害認定基準等の抜本的見直しを求める会長声明を公表しています。

こうした流れのなかで、日本障害者協議会は2026年3月17日、厚生労働省と日本年金機構に対し、認定基準など障害年金に関する課題の検討と、親・家族に依存しない所得保障制度の確立を求める要望書を提出しました。当会の代表理事は日本障害者協議会の政策委員として、このプロジェクトに参加しました。日本障害者協議会は、障害年金に特化した検討の場の設置、生活実態を踏まえた認定システムの再構築、第三者組織の設置、障害者の貧困実態に関するデータ分析と公表を求めており、問題を個別の認定実務にとどまらない生活保障全体の課題として位置づけています。

▼認定基準など障害年金に関する課題を検討し、親・家族に依存することのない所得保障制度の確立を求める要望書|日本障害者協議会(JD)

また、この一連の問題をめぐっては、障害年金法研究会のみなさんからも継続的に提言アクションが重ねられています。3月16日にホームページに掲載されていた障害年金法研究会編『障害年金法ジャーナル』第4号を併せてご紹介します。

▼障害年金法研究会編『障害年金法ジャーナル』第4号|障害年金法研究会

障害年金をめぐる問題は、個別の運用上の不備として片づけられるものではなく、生活保障制度としての信頼や実効性そのものに関わる課題です。引き続き改善にむけて取り組んでいきます。

<参考情報>

■厚生労働省の発表資料

▼令和6年度の障害年金の認定状況についての調査報告書(PDF)|厚生労働省

▼障害年金における認定調書の取扱いについて(PDF)|厚生労働省

■当会掲載の記事

▼【活動報告】5.19緊急要望アクション 障害年金不支給増問題|精神障害当事者会ポルケ

▼【活動報告】障害年金「不支給増」問題への見解|精神障害当事者会ポルケ

▼【活動報告】9.17障害年金不支給増問題ー厚労省との懇談報告|精神障害当事者会ポルケ

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