【活動報告】精神医療9号 特集「精神保健福祉法改正2022」寄稿
精神医療9号 特集「精神保健福祉法改正2022」に代表理事の山田悠平が「当事者の立場からみた法改正~」と題して寄稿しました。どうぞお手にお取りください。
令和3年10月、厚労省は「地域で安心して暮らせる精神保健医療福祉体制の実現に向けた検討会」を発足させ、「にも包括」、「第8次医療計画」そして「精神保健福祉法など関連法規の見直し」の検討を始めた。「安心検討会」は13回にわたる会合を経て、令和4年6月9日に報告書を提出し、それを基にして同年10月政府は様々な障害者支援に関連した「障害者の日常生活および社会生活を総合的に支援するための法律等の一部を改正する法律案」を国会に提出した。いわゆる「束ね法案」である。「束ね法案」は衆議院、参議院をそれぞれ1週間程度のごく短い審議機関で採択にこぎつけ、令和4年12月10日に可決・成立、同16日に公布された。精神保健福祉法に関する改正としては、①法の目的規定における権利擁護の明確化、②医療保護・措置入院時に入院の理由を告知、③医療保護入院の入院期間を6か月以内と規定、④家族等が同意・不同意の意思表示を行わない場合の市町村⾧同意を可能に、⑤措置入院者に対する退院後生活環境相談員の選任及び入院時の精神医療審査会の審査、⑥入院者訪問支援事業の創設、⑦精神科病院における虐待防止のための取組の推進と虐待通報に関する仕組の整備、⑧自治体が実施する精神保健に関する相談支援体制の整備、⑨「精神障害者」の例示から「精神病質」を削除、などの項目が含まれていた。
安心検討会の報告書の内容を思い出してみると、「不適切な隔離・拘束をゼロとする取組」「患者の意志に基いた退院後支援」「精神医療審査会マニュアルの見直し」といった項目がこの中には見当たらない。これらは今回の法改正には盛り込まれず、法改正に続いて政省令などのレベルでなんらかの手当てが施される可能性もある。
本特集では、今回の精神保健福祉法の改正について、上記の改正法案に挙げられている項目を中心に検討することになるが、そこでは扱われなかった重要なテーマについても改めて提示し、検討したいと考えている。いまだ多くの問題を抱えているわが国の精神保健福祉法の現状と今後について、複数の視点からの議論を期待している。
【目次】[巻頭言]太田順一郎/
【特集】[座談会] 精神保健福祉法改正を見据えて…岡田久実子+桐原尚之+太田順一郎+吉池毅志/[論文] 長谷川利夫+辻本哲士+吉岡隆一+姜 文江+彼谷哲志+山田悠平+北岡祐子【連載・コラム等】[視点]「就労支援の動向」木谷昌平/[コラム]香山リカ/[連載]バンダのバリエーション〈9〉塚本千秋/[リレー連載]精神科病院に風を吹かせる弁護士たち(第3回)村山 直/[書評]『声とともに生きる豊かな人生』藤本 豊/[紹介]『対人支援のダイアローグ』相澤和美/
【編集後記】吉池毅志