2022年度活動報告
■活動総評
2022年度は法人格を取得した2期目となる。公益財団法人こころのバリアフリー研究会からこころのバリアフリー大賞を受賞するなど、これまでの取り組みの評価をいただけた1年となった。国立精神・神経医療研究センターから委託事業として、当事者主導型研究についての調査活動を新たに受けることとなった。精神障害のインクルーシブ防災をテーマに被災経験のある精神障害のある人や支援職らのインタビュー調査などを敢行した。新型コロナウィルスの影響もひと段落をむかえ、教育機関等での講演活動などの機会も多くいただいた。また、日韓精神障害者交流事業を新たに始めることができた。国際的な連帯の広がりを今後強めていきたい。
(1) 精神障害者に関する普及・参画事業
1.当事者交流お話会(継続)
従前どおり月例開催を基本とし、東京都障害者福祉会館にて実施。第72回のみ会場の都合によりカムカム新蒲田第一集会室にて実施した。
・第62回 2022年4月23日…7名
・第63回 5月22日…13名
・第64回 6月19日…19名
・第65回 7月24日…中止(コロナ禍状況)
・第66回 8月13日…中止(台風)
・第67回 9月4日…12名
・第68回 10月19日…中止
・第69回 11月20日…12名
・第70回 12月3日…15名
・第71回 2023年1月15日…10名
・第72回 2月26日…11名
・第73回 3月21日…14名
プライバシー配慮の上、レポートをホームページにて公開している。
2022年度は公益財団法人公益推進協会の「思いやり支え合い」基金による助成事業として実施した。
2.行政会議への参加
活動を通じた課題感等の情報提供、課題解決のための提言を行う。
・大田区精神保健福祉推進会議に委員およびコア委員として山田が参加。
・大田区障害者差別解消支援地域協議会に山田が委員参加。(新規)
3.各種講演
1)講義(大学等)
・横浜市立大学(5月)
特別講義、当事者会活動の取り組みやアジア圏の精神障害当事者との取り組みなどを中心に話題提供。
・法政大学(10月)
学校論IV(キャリア教育)ゲスト講師を務めた。
・慶応義塾大学ゲスト講師(11月)
ゼミのクラスで当事者活動について話題提供。
・東京大学ゲスト講師(11月)
「国連とインクルージョン」クラスで話題提供。
・東京家政大学ゲスト講師(12月)
「共生社会をいきるインクルージョン」にて話題提供。
・白鷗大学ゲスト講師(12月)
当事者活動の取り組みについて話題提供。
2)その他講演
・リカバリーカレッジあんなか主催講座ゲスト講師(6月)
・NPO法人いずみ主催防災学習会ゲスト講師(9月)
・日本医療政策機構主催10月10日(月・祝)
世界メンタルヘルスデー公開シンポジウム「災害時のメンタルヘルス支援~応急対応から継続対応に向けた支援者連携のあり方~」登壇(10月)
・大田区実施知的障害者(児)移動支援従業者養成研修講師(11月)
・風雷社中実施知的障害者(児)移動支援従業者養成研修講師(11月)
4.寄稿
・『すべての人の社会』
2022年「すべての人の社会」(日本障害者協議会)4月号「精神障害者の参政権の課題」寄稿。
・『響き合う街で』
精神保健福祉ジャーナル『響き合う街で』101号(2022年5月、やどかり出版)「共同創造によって育まれる価値観とこれからの精神医療保険福祉」寄稿。
・『地域保健』
東京法規出版「地域保健9月号」精神障害と災害をテーマに寄稿。
・『精神医療』
『精神医療』 (編集:太田順一郎+古屋龍太、第5次「精神医療」編集委員会)第8号 特集「にも包括」って何なん?寄稿。
・『こころの科学』
こころの科学(日本評論社)2023年3月号、~こころの病気とスティグマ~寄稿。
・『月刊みんなねっと』
公益財団法人精神保健福祉会連合会(みんなねっと)が発行する「月刊みんなねっと」(2023年3月号)に寄稿。「障害者権利条約~韓国の家族との交流~」
・『発達障害者の私たちと精神医療』
特定非営利活動法人凸凹ライフデザイン発行『発達障害者の私たちと精神医療』のほか『発達障害当事者の多様な仕事観』へも寄稿。
(2) 精神障害者の権利擁護に関する事業
1.大田区精神障害者相談支援員(新規・委託)
区内在住の山田・加藤が従事した。山田が推薦団体となる。
2.ピア相談(新規・委託)
公益財団法人公益推進協会の助成事業の一環として取り組んだ。これまで任意で受けていた相談を事業化し、相談事例の蓄積を行った。
1日/週程度、基本的にメール、オンラインで対応した。必要に応じ対面相談を実施。
3.当事者の視点から期待する―これからの入院制度についての意識調査―
2022年4月22日~5月4日にwebアンケートを実施し、220件の回答を得た。医療保障について当事者が重要とするポイントは、「医師から説明を受けて安心して医療を受けられる」といったインフォームドコンセントに関するものであることが明らかになった。「入院治療は、誰かに強制されるかたちではなく、自分で判断したい」では、回答全体の91%から共感を示す回答が示された。
5月に『【報告書】当事者の視点から期待する―これからの入院制度についての意識調査―』を発行。
(3) 精神障害者に関する施策の調査研究事業
1.当事者主導型研究事業(委託)(新規)
国立精神・神経医療研究センター精神保健研究所より、2022年度より3か年の委託事業を受託実施している。「当事者主導型研究」として行う。〈精神障害と災害〉をテーマに、被災経験エリアでのヒアリング調査(7月:熊本、10月:福島にて実施)。関係者に外部アドバイザーを依頼しご協力いただいた。
これまで、令和元年台風第19号による被災を契機に防災に関する取り組みを進めていたが、本研究ではその経過を引き継ぎ、精神障害のある人の防災について、インタビュー調査分析等を通じて包括的に課題を明らかにし具体的な対策と提言につなげることを目的とする。担当:山田、相良。
・当事者主導型研究についての有識者からの意見聴取 曹洞宗人権推進本部、3月。
2.研究調査等への協力
1)愛知県立大学「患者の権利を守るための協力プログラム」
愛知県立大学看護学部 戸田由美子教授『精神科看護師への「患者の権利」を守るための教育プログラム』にかかる研究について、精神障害当事者の立場から会議等でのヒアリングに協力した。担当:山田、相良。
2)厚労科研費 入院からの退院後の地域サービスの連携に関する研究
担当:安藤、水月、相良
3)妊産婦のガイドラインへの協力
担当:佐藤
4)信州大学・CVPPP研修協力
研修:2023年1月28日(岡山市)、2月19日(佐賀市/オンライン)。担当:山田
5)東京工科大学「当事者参加による専門職養成の取り組み」(通年)
当事者参加を通じてより良い教育プログラムを提供するため、シラバスの作成から協力させていただき、2年間にわたって授業での当事者参加をデザインしたカリキュラムを作業療法学科の清家先生らと一緒に取り組んでいる。
6)統合失調症診療ガイドライン委員会
「統合失調症薬物治療ガイド2022―患者と支援者のために―」が2023年2月15日、日本神経精神薬理学会(JSNP)および日本臨床精神神経薬理学会(JSCNP)のホームページで公開された。ガイドラインをもとにした診察の場面での患者や家族や支援者らの活用を目的としている。
7)CEOのための障害と多様性に関するグローバル・ファクトシート(日本財団)
The Valuable 500の推進に関する日本財団が主導するプロジェクトに参画、成果物のひとつして「CEOのための障害と多様性に関するグローバル・ファクトシート」が公開された。
3.研究調査の実施(自主事業)
1)入院制度に関する意識調査
「当事者の視点から期待する―これからの入院制度についての意識調査―」4月23日~5月4日、WEBフォームを通じて精神科・心療内科に現在通院・入院をしている方を対象に実施。回答220件。最も重要とする項目は、「医師から説明を受けて安心して医療を受けられる」といったインフォームドコンセントに関することであった。
2)身体拘束の要件緩和・告示改正に関する意識調査
2022年10月実施。全国から238件(精神科病院の職員もしくはその経験者は全体の約6割の141件の回答)の回答。「身体拘束の要件緩和・告示改正に関する意識調査報告書」は第210臨時国会で審議された精神保健福祉法改正に際してのロビー活動等に活用した。
(4) 精神障害者に関する施策の政策提言事業
1.国連人権メカニズムによる政策提言
山田が加盟団体の全国「精神病」者集団のメンバーとして日本障害フォーラム障害者権利条約作成特別委員を務めている。パラレルレポートの作成およびロビー活動に従事し、2022年8月に第1回締約国審査を迎えた。本会としても取り組みの周知を積極的に行った。
1)障害者権利条約推進議員連盟総会参加
11月に開催された障害者権利条約推進議員連盟総会に参加、障害者権利条約の対日審査後初めての開催。総括所見を踏まえた今後の施策の実施について、超党派から力強いメッセージが上がった。
2.要望活動
国および東京都、大田区などに要望活動を行う。(これまでの活動や要望書を精査し獲得目標を確認する。)パブリックコメントの提出
国・・・オンライン診察、交通割引、ピアサポート
東京都・ピアサポート事業、災害
1)障害を理由とする差別の解消の推進に関する基本方針(改定案)に係る意見提出
2021年5月に障害者差別解消法が改正され、本年11月まで内閣府障害者政策委員会にて基本方針の改定が議論された。この改定案について実施されていたパブリックコメントに際して以下の要旨で提言。「障害について偏見や差別の問題が根深い状況の中で、精神障害を明らかにして合理的配慮を得ることが構造的に困難があることを見据えた制度運用のあり方を求める。また、内閣府障害者政策委員会に精神障害者などの代表ある障害者団体の参加がされていないことは大きな課題だと考えている。」
2)障害者権利条約一般的意見8号に関する意見提出
2023年3月6日~24日までスイスのジュネーブ開催の障害者権利委員会第28回会期に際して募集されていた障害者権利条約11条に関する一般的意見8号についての意見書を提出。11条は、危険な状況及び人道上の緊急事態を定めたもので、紛争や災害時についての事項を対象にしているもの。
(5) 精神障害者に関する広報・啓発事業
1.オンラインでの発信(継続)
ホームページ、メルマガ配信、SNS等を通じて、活動内容や各種イベントなどの情報提供を行い、関心喚起、積極的な関与の土壌醸成に努めた。
2.ポルケニュース発行(継続)
紙媒体での発行を4回行った。応援会員、関係機関などへ配布。
3.マスメディア応対(継続)
新聞社、テレビ局の取材に協力。当事者団体としてプレスリリースなどを通じ情報提供を行った。
1)新聞社
・共同通信社大阪社会部(大阪ビル火災事件に関するアンケート調査)
⇒4/1信濃毎日新聞夕刊・4/4大阪日日新聞朝刊
・福祉新聞 NZメディアガイドライン翻訳公開
・東京新聞 うつ病による国会議員辞職に関して
・朝日新聞 障害者権利条約対日審査/障害者へのサービス提供や支援に関する基本指針見直しについて
2)小学館 柏木ハルコ氏
9月6日より、小学館ビッグコミックスピリッツに連載中のマンガ作品『健康で文化的な最低限度の生活』作者柏木ハルコ氏の取材に定期的に協力している。(2023年5月29日発売分より連載開始)
3)テレビ局
・NHKバリバラ2022年4月22日放映「あなたの隣の“メンタルさん” 〜精神疾患 自分らしく生きる〜」山田出演。
・インターネット報道番組「ABEMA Prime」(テレビ朝日) 5月30日放映 番組特集「医療保護入院した当事者が生出演 身体拘束は誰のため?家族たちの不安どう解消」堀合出演。
・NHKバリバラ2023年1月6日放映「NOTHING ABOUT US WITHOUT US! 国連勧告を受けて(1)」山田出演。2022年11月収録。
4.メンタルヘルスと精神障害理解啓発プロジェクト(継続)
メンタルヘルスの啓発と精神障害に関する人権学習の両輪をテーマにした啓発プロジェクトを実施。
昨年度採択された大田区地域力応援基金ステップアップ助成を今年度も活用し、啓発資料『私たちが行う障害理解啓発プロジェクト 共生社会づくりに向けての歩み』を作成、配布した。
5.精神障害のある人の障害福祉サービスを活用した暮らしのデザイン啓発(新規)
障害福祉サービスの利用に関する当事者目線での啓発活動を行う。「必要な人が必要に応じて利用する」という立て付けを踏まえて、サービスの種類の説明、利用開始方法、利用に伴う事業所、ヘルパーとの調整の方法など、利用する立場の視点から動画コンテンツによる啓発資料を作成、公開した。タチバナ財団助成事業として実施。
6.NZメディアガイドライン文献調査報告
2021年12月に発生した大阪北新地ビル火災事件を受け、2022年2月に意識調査を実施。メディア報道のあり方への課題意識から種々の活動を進め、『【NZ メディアガイドライン文献調査報告資料】こころの健康と精神疾患について報道する際のガイドラインをより良いものに改めていくために』を2022年12月に発行した。
12月15日、厚生労働省記者会にて記者会見を実施。福祉新聞(12月27日)等に記事が掲載された。
(6) 精神障害者のネットワークづくりに関わる事業
1.グローバル領域の活動
1)TCI国際会議参加
TCI、WNUSPなどの組織に日本の障害者団体のプレゼンスを高めていく。
2022年4月にはTCIの国際会議(タイ・バンコク)に山田が参加。
2)日韓障害者交流事業
10月に訪韓。韓国の精神障害者団体などと交流を深める。日韓文化交流基金の人物交流助成事業として行った。「障害者権利条約の実施に向けて~韓国の市民社会の取り組みから~ 報告会2022」を2023年2月3日に東京大学とzoomのハイブリッド開催。『日韓精神障害者交流事業(2022年度)~報告書~』を3月発行、頒布した。
3)国連アジア太平洋経済社会委員会(障害インクルーシブ防災)
国連アジア太平洋経済社会委員会(UN ESCAP)主催の障害インクルーシブ防災(DIDRR: Disability Inclusive Disaster Risk Reduction)をテーマとした会合に2022年5月参加。近年実施の大田区でのマイタイムライン講習会取り組み事例や障害者団体としての取り組みや知見をプレゼンテーションした。
4)国連障害者権利条約締約国会議サイドイベント共催
6月17日、オンラインで実施されたサイドイベント「災害時・人道危機時の心のウェルビーイングと精神障害の包摂」に共催団体として関わった。精神障害×災害についての活動についてスピーチ。
5)「アジア太平洋障害者の10年」の最終レビューに関するハイレベル政府間会合サイドイベント登壇
11月、インドネシアのジャカルタで開催されたハイレベル政府間会合において、脱施設化に向けた取り組みをテーマとしたサイドイベントにオンラインで登壇、国内の精神保健福祉体制の課題や障害者団体の取り組みなどを情報提供した。
6)台湾国家人権委員会訪日団との懇談
11月、台湾国家人権委員会および研修者の一行が訪日、日本障害フォーラムにも訪問。台湾において触法精神障害者に関する法律が改正され、実務上の課題が山積しておりヒアリングをされたとのこと。ポルケからも医療観察法や触法障害概念に対する見解を述べた。
2.全国区の活動
・全国「精神病」者集団、DPI日本会議の加盟団体として各種の取り組みに積極的に参画した。
リカバリーカレッジの集い、コミュニティ・ワーク連絡会、ショートタイムワークアライアンスに参画。
・JDF主催 障害者権利条約 第1回建設的対話報告会(9月)
3.大田区の活動
活動拠点とする大田区の民間ネットワーク、①おおた区民活動団体連絡会、②リカバリーカレッジおおた、③障害者理解啓発グループおおた~ツタエルチカラ~での各種の取り組みに積極的に参画し、ネットワークづくりと強化に努めた。
1)おおた精神保健福祉地域ネットワークづくり交流会2022
11月、大田区障がい者総合サポートセンターで開催。大田区障害者理解啓発グループおおたと大田区精神障害者家族連絡会つばさ会による共催企画。大田区にゆかりのある当事者、家族、専門職ら幅広い方々が集い交流の機会をもつことができた。37名参加。
7.その他、当法人の目的を達成するために必要な事業
1.関係団体との連携/協力事業
1)各関係団体への協力
〇熊本市の発達障害当事者団体凸凹ライフデザインの事業への協力
・講師
2022年11月20日 オンラインセミナー「学校から『来ないで』と言われた経験談から考える地域の教育・子育て環境」
2023年1月22日 「発達障害者による発達障害者のためのWRAP®ミニ講座」(熊本市)、「学校教育の”常識”をとらえなおす オルタナティブ教育を考えるWING SCHOOL校長先生と発達障害者らを囲む座談会」(熊本市)
・障害理解啓発冊子寄稿、編集
『発達障害者の私たちと精神医療』(2022.11)編者
『発達障害当事者の多様な仕事観』(2022.12)編者
『発達障害者のためのWRAP® BOOK―枠組みの構築―』(2022.12)編者
〇10月「さりげない配慮どうやるの?~外見からわからない障害・難病などについて~」(東京都世田谷区)企画協力。
〇10月30日 第15回おおたユニバーサル駅伝大会(後援事業)
〇12月17日 ツタエルチカラ理解啓発プロジェクト2022(後援事業)演劇鑑賞会『私、精神科医編』&くるみざわしんさんトークイベント
〇1月20日 熊本県発達障害当事者会Little bit「歓迎定例会」(熊本市)ゲスト
2.その他
1)第7回こころのバリアフリー大賞受賞
公益財団法人こころのバリアフリー研究会から、6月4日・5日。記念講演を実施。