【報告】『夜明け前 呉秀三と無名の精神障害者の 100 年』 上映&シンポジウム in おおた 

地域関係者の協力のもとおかげさまをもちまして、「『夜明け前 呉秀三と無名の精神障害者の 100 年』 上映&シンポジウム in おおた」の企画は、300人を越える方々にご来場いただき、成功裏に終えることができました。

当事者会、家族会、福祉関係者など垣根を越えて、今後も地域活動に取り組んでいく所存です。

実行委員会として報告書をまとめましたので下記転載いたします。
ご一読いただけますと幸甚です。

PDFデータ 「夜明け前 呉秀三と無名の精神障害者の100年」inおおた開催報告書

『夜明け前 呉秀三と無名の精神障害者の 100 年』
上映&シンポジウム in おおた実行委員会
実行委員長 山田悠平
(精神障害当事者会ポルケ 代表 )


『夜明け前 呉秀三と無名の精神障害者の100年』上映&シンポジウム in おおた 報告書

 

■日時:2018年12月22日(土)

合計349名参加
・昼の部(15時~17時) ⇒ 280人
・夜の部(18時~20時) ⇒  69人

■会場:東京工科大学3号館10階階段教室(31001教室)

■主催:『夜明け前 呉秀三と無名の精神障害者の100年』上映&シンポジウムinおおた実行委員会

■後援:大田区、社会福祉法人大田区社会福祉協議会、大田区自立支援連絡会、大田区障害者スポーツ倶楽部、大森医師会、田園調布医師会、蒲田医師会、おおた社会福祉士会、大田障害者連絡会、大田区障害者権利条例を作る会、大田区精神障害者家族連絡会、NPO法人福祉コミュニティ大田、NPO法人おおた市民活動推進機構、NPO法人ステップ夢、とちの実作業所、精神障害当事者会ポルケ、東京都大田福祉工場、社会福祉法人プシケおおた、プシケおおた賛助会、NPO法人風雷社中、おおた精神障がい者の地域生活を考える会(以上、20組織・団体)

■協賛:クローバースマイル、NPO法人おおた市民活動推進機構、NPO法人 ステップ夢、健康管理食宅配サービスけんたくん 大田店、おおた社会福祉士会会員有志、大田区精神障害者家族連絡会、大田区職員労働組合、社会福祉法人プシケおおた、大田区社会保障推進協議会、とちの実作業所、大田障害者連絡会、精神障害当事者会ポルケ(以上12組織・団体)


<企画概要>

同日会場にて二部構成で本企画を実施しました。

昼の部は、映画上映とパネルディスカッション、夜の部は映画上映と講演会をいたしました。

 

〇上映映画 「夜明け前 呉秀三と無名の精神障害者の100年」

呉秀三(くれ しゅうぞう)は、明治大正期に東京大学医学部精神科の教授として、日本の近代精神医療の礎を築きました。

彼は精神疾患の人々が「座敷牢」に押し込まれる実情を憂い、その解決のために奔走しました。

その土台となった報告書『精神病者私宅監置ノ実況及ビ其統計的観察』を1918年に提起し、多方面へ働きかけました。

それから1世紀の年月が過ぎた今、精神障害の問題はどうなっているのでしょうか。本作は彼の功績をたどる記録映画である。

・制作:記念映画制作委員会 公益財団法人日本精神衛生会/きょうされん/有限会社イメージ・サテライト

・監督:今井友樹 ・ナレーション:竹下景子 ・出演:岡田靖雄(「青柿舎」代表)他


〇昼の部 ~シンポジウム 当事者、家族、医療者が語るおおたの「夜明け」~

◆越智祥太(おちさちひろ)さん
千葉大卒。内科3年、港町診療所、久里浜病院、東京厚生年金病院、多摩あおば病院を経て、南晴病院で十年隔離拘束ない運営するも昨年退職となり、横浜のドヤ街にあることぶき共同診療所勤務。

 

◆川﨑洋子(かわさきようこ)さん
日本社会事業大学大学院福祉マネジメント研究科卒。職歴、朝日出版社編集部、こうじや生活支援センター施設長、全国精神保健福祉会連合会 理事長。現職、東京都精神障害者家族会連合会 副会長、大田区精神障害者家族連絡会、代表。

 

◆山田悠平(やまだゆうへい)さん
大田区出身・在住。1984年生まれ。精神障害当事者として活動する。
大田障害者連絡会、精神障害当事者会ポルケのそれぞれ代表を務める。他に、大田区自立支援協議会の專門部会のみ委員等。

 

 

〇夜の部 ~講演会 病むとされる側から見た「監置」と「精神病」~


◆兵頭晶子(ひょうどうあきこ)さん
歴史学研究者、日本社会臨床学会会員。大阪大学大学院文学研究科博士後期課程修了。博士(文学)。著書に『精神病の日本近代──憑く心身から病む心身へ』(青弓社、2008年)他多数。

 

<参加者の声>

当日はあいにく雨の中の開催となりましたが、多くの方々のご来場がありました。参加者アンケートの一部をご紹介します。

 

【第1部】

・映画をからめての、シンポジウムが大変よかった。

・自身の内なる偏見の目や差別の目にそむけず、医療モデルにそまることなく生活モデルで捉えて
いく視点を再認識した。医療のあり方は国の政治、経済に左右されるため、構造にしっかり目を
向けていきたいと思う。シンポジウムをお聞きして、夜明け前の映画を多角的に理解できました。

・当事者の山田さんの声、ご家族の川﨑さんの声、精神科医の越智さんの声、それぞれの声、本音が
聞けて大変有意義でした。大切な友人に当事者の方がいます。彼の事を重ねながらいろいろ考え
させて頂きました。この映画を見ただけでは感じ得ない大切な物を3人のお話しから感じる事が
できました。

・「何が幸せか不幸せかはいちがいには言えないかな。」という山田さんの言葉が印象に残りました。
視点を広げてもらうきっかけになる映画です。越智さんの話を聞いて、何度か映画を見直してみ
たいと感じました。医者の目線から作られた映画でもあるとも感じました。

・家族会の者です。「夜明け前」は見るのがこわかったですが、理路整然で有難かったです。やはり、
言葉で語る、語るを聞くことが私たちに必要不可欠です。

・「この国に生まれたる不幸」ではなく、「この国に生まれた幸せ」を感じる国にしたいですね。

・一般として参加致しましたが、もっともっと広報して参加者が増え、理解してもらうための機会
を作っていったらよいと思います。

・精神障害者を取り巻く環境と精神障害者の人権確保に向け、その礎を築いてきた呉秀三さんの功
績を知る機会になりました。映画の中でもありましたが、精神保健福祉がこの時代の前進から、
現代は後退している様に感じます。一番大切なのは当事者の思いです。

【第2部】

・多角的視点で演者が構成されていておもしろかった。理想は問題提起として重要だとは思う。

・歴史からのお話しはとても興味深いものでした。簡単に地域包括支援システムなどと話してはい
けないと感じ取りました。

・次の展開と言うお話しが最後にありました。いくつかの方向性の示唆をいただけるともっと次に
つなげる力をいただけた気がしました。

・兵頭さんの話はよかった。映画とのバランスがとれてよかった。

・兵頭さんの話大変わかりやすかったです。精神科訪問看護にたずさわっているので実感すること
が多かったです。

・映画では呉秀三を評価する内容だったが、シンポジストの兵頭さんの話、呉秀三の業績を慎重に
みていくという視点は興味深く思いました。

 

<実行委員会について>

当事者、家族、支援者、学識者など多様なメンバー11人によって企画実施されました。

〇実行委員名簿(五十音順)

名前 実行委員名会役職 所属
生駒 友一 監事 おおた社会福祉士会
石橋  仁美 東京工科大学 医療保健学部 作業療法学科
大内 伸一 NPO法人ステップ夢
岡田 あい子 大田区障害者権利条例を作る会
川上 みどり 社会福祉法人プシケおおた
川﨑 洋子 大田区精神障害者家族連絡会
喜井 悠策 個人参加
黒田 浩康 事務局長 大田障害者連絡会 /とちの実作業所
濱口 正義 事務局次長 社会福祉法人プシケおおた
濱野 勇気 社会福祉法人プシケおおた
山田 悠平 代表 大田障害者連絡会 /精神障害当事者会ポルケ

 

〇実行委員会 実施状況

月  日 会  場 会  議  内  容
1 7月30日(月)
19:00〜21:00
大田区立消費者生活センター1階
mics相談交流室
企画の打診
枠組みのアイディア出し
2 9月7日(金)
昼の部15:00〜
夜の部19:00〜
大田文化の森集会室② 昼の部は、試写会のみ。

夜の部は、試写会&会議。

3 10月5日(水)
19:00〜21:00
大田区立消費者生活センター2階 第2集会室 キックオフ会議
4 11月5日(月)
14:00〜16:00
コミュニティスペースにしかまた 企画概要、チラシ案の検討
後援依頼先の検討
5 11月28日(水)
19:00〜21:00
大田区立消費者生活センター1階
mics相談交流室
申込状況の確認
広報戦略協賛団体の確認
当日運営について
6 12月11日(火)
19:00〜21:00
大田区立消費者生活センター1階
mics相談交流室
申込状況の確認
広報、後援団体の確認
資料準備
当日役割分担
7 12月22日(土)
13:00〜20:30
東京工科大学3号館10階階段教室(31001教室) イベント当日
8 2月1日(金)
19:00〜21:00
大田区立消費者生活センター1階
mics相談交流室
イベント総括
報告書作成
会計監査
9 2月5日(火)
13:00〜14:00
コミュニティスペースにしかまた イベント総括
報告書の確認

 

<会計報告>

<監査報告>

「『夜明け前 呉秀三と無名の精神障害者の100年』 上映&シンポジウム in おおた」事業活動(2018年7月30日から2019年2月5日)における会計監査を行ない、下記のとおり報告します。

(1)会計監査について、帳簿ならびに関係書類の閲覧などを行い、計算書類の正確性を検討しました。

(2)会計報告は、会計帳簿の記載金額と一致し収支状況を正しく示していると認めます。

監事     生駒 友一

<今後に向けて>

近年の研究によると、一生の間に5人に1人は何らかの精神疾患にかかると言われているようです。つまり、平均すれば、どの家庭でも、ごく近い親族を加えれば1人かそれ以上が精神疾患に罹患しているということになります。それだけ精神疾患は私たちの暮らしにとって身近なものになっているはずです。しかし、残念ながらまだまだ精神疾患、障害のことがオープンに語られるようにはなっていないように思います。精神障害のテーマを一人でも多くの区民に自分事として考えていただける場を作りたいと思っておりました。そういう意味でも、今回の取り組みは大変刺激的なものとなりました。

 

この度の上映会の取り組みは、大田区内の当事者団体、家族会、支援関係者など立場を超えて一丸となって取り組んでまいりました。上映活動のきっかけは、『夜明け前 呉秀三と無名の精神障害者の100年』の試写会で、家族会の川﨑さんと「地域でぜひやりましょう!」と声を掛けあったことでした。

また、映画の共同制作団体の「きょうされん」の地域福祉関係者の率先した協力もありました。声掛けのもとに集ってくれた地域の関係者もいました。多くの仲間の協力に感謝いたします。

プロジェクトの動きを後押ししてくれた地域の関係者もいました。組織として、大田区をはじめ地域団体20団体以上による後援、協賛をいただきました。

会場のご提供並びにボランティア協力として、東京工科大学の皆様には多大な貢献をいただきました。

そして、年末の折に、また当日雨の中お越しいただいた来場者の皆様にこの場をお借りして、厚く御礼申し上げます。

今後も地域の関係者とともに精神障害に関するテーマを地域で課題提起、理解啓発を取り上げていきたいと思います。

「おおたの夜明け」をつくっていきましょう!これからもよろしくお願いいたします。

 

『夜明け前 呉秀三と無名の精神障害者の100年』
上映&シンポジウムinおおた実行委員会
実行委員長 山田悠平

<報告書発行>
『夜明け前 呉秀三と無名の精神障害者の100年』上映&シンポジウムinおおた実行委員会
発行日:2019年2月5日

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