曹洞宗人権啓発資料作成委員を務めることになりました
曹洞宗人権啓発資料作成委員会の委員というお役目を務めることになりました!
全国のお寺でお坊さんたちが障害理解(特に精神障害、知的障害)を効果的な学びの資料をつくる役割です。
年明けからは映像資料の作成が本格化します。
この記事では、わたしたち当事者会とご縁をいただいた曹洞宗の人権啓発の取り組みについてレポートしたいと思います。
曹洞宗の人権啓発の取り組み
曹洞宗というと教科書で見覚えのある方も多いかもしれません。
鎌倉時代にはじまった最も代表的な禅宗のひとつで、座禅のイメージを抱かれた方も多いかもしれません。
かく言う私は中学高校と曹洞宗系の学校に通っていたので、今回のことには大変ご縁を感じるところです。
本山の永平寺の静寂な空間で、警策(きょうさく)でパシンっと、打たれたのは良い思い出です。
(上手な人がやると、音は響くのですが、なぜか痛くないのです)
在学中には知る由もなかったのですが、曹洞宗ではお坊さんへの宗教教義の学びの他に人権啓発を行ってきました。
皆さんの中には「なぜ、僧侶の方が人権に取り組むの?」と思っている方がいらっしゃるのではないでしょうか。
私たちが、社会的差別の撤廃、人権の確立を目指して取り組みを進めるのは「お釈迦さまと両祖の人間平等の教えを継承する」という大切な意味があります。
(中略)
出自(身分・生まれ)や門地(家柄)による差別を明確に否定されているのです。また、「人間平等の教えを継承する」僧侶や檀信徒も、この取り組みを通して、自身の内面にある「偏見」を常に自己点検していかなければならないのです。
仏教と人権思想はまったく同じではありませんが、仏教の説く人間平等の教えは、人間の尊厳を尊重し支えあっていく視点と大きく共通するものなのです。
たとえば、過去帳の扱いについて
人権啓発といっても、いろいろな切り口がありますが、当初の取り組みは同和問題を軸にしてきたようです。
その一環として、たとえばお寺で保管している過去帳(お家のご先祖の名前が書かれたもの)の扱いについてプライバシー配慮をするように寺院に啓発しています。
過去の反省も・・
人権啓発を行うにあたり、かつて曹洞宗においても布教宣布のなかで、「過去世の『悪業』の結果、現世において障害を持っている」と障害者差別に加担してきた歴史的事実にも向き合っています。
仏教と障害者差別
宗門において、「差別図書」として回収本となっている『洞上室内切紙参話研究並秘録』は、師僧から代々伝えられた「切紙」などを集め、編纂し、解説を加えたもので、1938年から1973年まで出版されていました。
この中に「非人癩病狂死者引導法並符」と題する項目があります。
ここに「其ノ屍(しかばね)ヲ導師ノ風上ニ置クベカラズ」とあり、その遺体を「穢れたもの」として見ています。これは、部落差別をはじめハンセン病患者や障害者差別を助長するもので、その死者に対する喪儀法を一般の人々と異なった、差別的な儀礼で行うよう記されており、障害者などに対する差別意識を流布させたのです。
さらに「切紙」では、障害者等のことを「業報」や「因果」によるものと断定し、「汝元来不生不滅、無父無母無兄弟、此土身去再不来、輪廻顚倒直断絶」と唱えさせ、この世の一切の者と縁を絶ち、二度と生まれてきてはならない、輪廻さえも許さずと、極めて差別的な絶滅・断絶思想をも伝承してきたのです。
また、1982年に宗門内で復刻出版された『家庭訓』という書籍にも極めて差別的な記述があります。
―さらに厳重に血統をまもらなければならぬうえからは、精神病、癩病、悪質の伝染病等に注意し、不純な血を警戒し防止せねばならぬ
ここでは「血統」を重んじ、不純な血を警戒防止しなさいと、従来の仏教で「業病」とされた精神的疾患者をはじめハンセン病を排除するという考えが記されています。
そうした過去の加害性に向き合い、啓発活動に取り組むことに敬意を表したいと思います。
なお、障害者差別解消法施行が、宗門として取り組みを始める大きなきっかけになったようです。
当事者会への取材をいただきました
最近では、ポルケ当事者会に取材をいただきました。
「そもそも、幸せってなんでしょう?」そんな難しい質問もありましたが、それぞれの経験を通じて楽しくお話できました。
ん~仏教は奥深いですね。
これからご一緒する取り組みを楽しみにしています(山田)