【活動報告】日韓精神障害者交流事業(2023年度)レポート

精神障害当事者会ポルケは、前年度に続き、第二回目となる日韓精神障害者交流事業を行いました。この事業は公益財団法人日韓文化交流基金の助成事業の一環として取り組みました。改めまして、ご支援に心より感謝申し上げます。

2024年1月8日〜12日の5日間、以下の訪問団のメンバーのみなさんと共に、韓国へと訪問しました。

<訪問団>

DPI日本会議 議長補佐 崔栄繁
全国精神保健福祉会連合会 事務局長 小幡恭弘
立命館衣笠総合研究機構生存学研究所 准教授 伊東香純
国立精神・神経医療研究センター精神保健研究所 地域精神保健・法制度研究部室長 山口創生
国立精神・神経医療研究センター精神保健研究所 地域精神保健・法制度研究部リサーチフェロー 川口敬之
精神障害当事者会ポルケ 事務局スタッフ 猪島章子
精神障害当事者会ポルケ 理事 相良真央
精神障害当事者会ポルケ 代表理事 山田悠平

8日に渡韓後、翌日9日には大邱市にある精神科単科病院・大同病院に訪問いたしました。山口創生さんのご紹介のおかげで、朴相運(パク・サンウン)院長にご歓待いただき、院内見学と当事者、家族会の方々との意見交換の場を設けていただきました。

▲ピアスタッフのみなさんも参加してくれました。大同病院のみなさんとともに(1/9)

10日には、精神障害のある人が運営をする3つの自立生活センターと精神科リハビリテーション協会のみなさんとの懇談の機会を得ました。訪問先の松波ピアサポートセンターでは当事者の方々が主導となって運営している精神的危機の際に入院を防ぐために一時的に見守る施設や、“私たち抜きに私たちのことを語るな”をスローガンとする独自のWEBメディア運営についての取り組みをお伺いしました。リハビリテーション協会では、6名の役員の方々と精神科リハビリテーションについて、日韓の取り組みをもとに意見交換を行いました。

▲自立生活センター・松波ピアサポートセンターにて(1/10)

▲精神科リハビリテーション協会の皆さんとの懇談(1/10)

11日は、国家人権委員会への訪問と、韓国の障害当事者・家族会の方々との交流会を行いました。パリ原則に則った国内人権機関である国家人権委員会では、ナム・キュスン局長をはじめ5名の職員の方々と懇談ののちに、バリアフリーが進んでいる委員会の関連施設内を案内していただきました。ナム・キュスン局長が、「精神障害者に対する人権侵害は、韓国国内で最も深刻な人権問題だと考えている」と語ってくださったのが印象に残っています。国家人権委員会は、障害分野のみならず様々な人権意識の市民の向上に寄与しているそうです。日本には未だに整備されていない機能ですが、必要性を痛感しました。

午後は、DPI韓国会議のイ・ヨンソク会長のご紹介で、30名以上の韓国の障害当事者・家族会の方々と交流いたしました。韓国の精神障害分野における人権侵害の歴史や、2024年施行予定の精神障害者の家族への支援に関する法律などをご紹介いただきました。日本からも、全国精神保健福祉会連合会の小幡さん、国立精神・神経医療研究センターの川口さん、当会の山田の3名から、日本の精神障害者を取り巻く状況と政策について紹介させていただき、相互理解を深めました。

▲ソウル市内の国家人権委員会の事務所にて(1/11)

▲日韓の精神障害者・家族会の交流を今年度も行うことができました(1/11)

最終日の12日は、イルム・センターにて、国連障害者権利条約委員会の委員でいらっしゃるキム・ミヨン氏と、ユースが主体となって活動している韓国の2つの発達障害当事者会のみなさんと交流いたしました。団体では、発達障害を細かくわけずに「神経多様者」というフレーズで括ることで、多様性を包摂する取り組みを伺い発達障害分野における当事者活動の広がりを感じました。

▲障害者権利委員会委員キム・ミヨン氏と発達障害コミュニティのみなさんと(1/12)

私は日本のユースの当事者として、初めてこの事業に参加させていただきました。日韓は若者の死因の一位が共に自殺であり、その背景となる社会的要因(いじめ、厳しい受験戦争)も共通していたりと、本分野での類似点は非常に多いと考えていました。しかし、精神障害者への取り組みに関しては、かなり大きな差を感じました。とりわけ、院内学校による入院中の出席点の補填制度や、ユースの方々の当事者活動へのより積極的かつ主体的な参加関わりを知ることができ、国内における活動へと大きな示唆を得ることができました。今年2月以降の韓国留学中に、この度知り合った方々とさらに交流を深め、相互理解と学びを深めてまいりたいと思います。

今後に関しましては、今年の世界メンタルヘルスデー(10月10日)に開催予定の韓国の精神障害当事者のイベントに参画し、日韓での合同の精神障害の理解啓発プロジェクトを行う予定です。そのためにまた渡韓できるよう頑張ってまいります。

最後に、訪問団のメンバー、滞在先の韓国の市民社会の皆様にも心より感謝申し上げます。特に、日韓通訳とアテンドをしてくださった崔さん、交流だけでなく車の運転で移動を手伝っていただいたイ・ヨンソク氏に深く御礼申し上げます。今後も継続的に海外の知見を参考にして、国内の活動の展開に活かしてまいります。今後ともよろしくお願いいたします。(事務局スタッフ・猪島)

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