旧優生保護法救済法成立しましたが・・・

子どもをもつことは、誰しもが認める権利です。
日本国憲法には幸福追求権というものがあり、法的な位置付けにおいても普遍的な価値として尊重されるべきものです。
しかし、現行憲法が制定された1948年~1996年まで、この国には優生保護法という法律がありました。
この法律により、障害があるために、不妊手術がおこなれ、生殖能力を強制的に奪われた人が数多くいます。
麻酔薬を投与されるなどして、強制的に手術を受けさせられた人も多くいるので、ご本人自身が手術を受けたこと自体を

ご存知ない人もいると言われています。
被害者への「おわび」と一時金320万円の支給を盛り込んだ議員立法の救済法が24日午前、参院本会議で全会一致で可決され、成立しました。
救済策を検討してきた与党の作業チームと野党を含む超党派の議員連盟は国会内でそろって記者会見しました。

 



超党派の議員連盟の会長を務める自民党の尾辻元参議院副議長は、「関係する皆さんがお年を召しており、まずはおわびを示したいという思いで作業してきた。短い期間で成立させることができたことは大変よかった」と述べました。

一方、おわびの主体を「我々」としたことについて、議員連盟のメンバーで立憲民主党の西村智奈美衆議院議員は「主に念頭に置いているのは旧優生保護法を制定した立法府と、執行した行政府だ。戦後初めて議員立法で成立した法律への立法府の責任は重く、けじめをつけなければいけないという思いがあった」と述べました。

出典:NHKニュース2019.4.24
旧優生保護法救済法成立「これで終わりでない」超党派議員連盟


そして、本来、患者を守る立場だった精神科医や入所施設は強制手術に抵抗することなく、むしろ加担してことが明らかになっています。
「精神障害者の遺伝を防止するための優生手術の実践を促進せしむる財政措置を講ずること」として、過去に精神科医療業界の日本精神衛生会と日本精神病院協会は陳情書を提出しています。

このこと自体について、注目されてもいいように思います。
医療業界としての総括が待たれるところです。

 



救済法成立し、首相談話が発表されました。

 




本日、旧優生保護法に基づく優生手術等を受けた者に対する一時金の支給等に関する法律が成立いたしました。
 昭和23年制定の旧優生保護法に基づき、あるいは旧優生保護法の存在を背景として、多くの方々が、特定の疾病や障害を有すること等を理由に、平成8年に旧優生保護法に定められていた優生手術に関する規定が削除されるまでの間において生殖を不能にする手術等を受けることを強いられ、心身に多大な苦痛を受けてこられました。このことに対して、政府としても、旧優生保護法を執行していた立場から、真摯に反省し、心から深くお詫び申し上げます。

 本日成立した法律では、厚生労働省が一時金の支給の事務を担うこととされています。今回の法律が制定されるに至った経緯や趣旨を十分に踏まえ、政府として法律の趣旨や内容について、広く国民への周知等に努めるとともに、着実に一時金の支給が行われるよう全力を尽くしてまいります。

 また、このような事態を二度と繰り返さないよう、全ての国民が疾病や障害の有無によって分け隔てられることなく相互に人格と個性を尊重し合いながら共生する社会の実現に向けて、政府として最大限の努力を尽くしてまいります。

 

旧優生保護法に基づく優生手術等を受けた者に対する一時金の支給等に関する法律の成立を受けての内閣総理大臣の談話


 しかし、先日こちらにも記した通り、優生保護法が定めた優生手術に関する規定の削除以降も、障害や疾病を理由にして、生殖を不能にする手術等を受けることを強いられた人々もいます。

残念ながら、これらのことは置き去りになったままです。
自身が関わる日本障害フォーラム(JDF)の差別解消委員会で言及もしました。
JDFの声明では、それらの課題を含めて、今後の課題についても言及をしています。



「旧優生保護法に基づく優生手術を受けた者に対する一時金の支給等に関する法律」の成立にあたっての声明

日本障害フォーラム(JDF)
代表 阿部 一彦

 私たちは、3月5日に「旧優生保護法下における強制不妊手術に関するJDFフォーラム」を参議院議員会館で開催し、300人近い参加者とともに優生保護法被害者のための新たな法律が憲法の精神に立脚し、障害者権利条約など批准されている関連の国際規範に則り、被害者の立場に立った、立法府の良心に恥じない水準であることを求めました。
 「旧優生保護法に基づく優生手術を受けた者に対する一時金の支給等に関する法律」が4月24日に全会一致で成立しました。これまでの党派を超えての取り組みに、敬意を表するものです。しかしながら、訴訟原告や支援者が求めた内容には遠い状況にあり、法制定後もきめ細かい丁寧な対応ができるよう支援を続けていく必要があります。

 2018年1月の仙台地裁への提訴に始まり、全国7地裁で20人の原告が優生保護法被害を訴え裁判に立ち上がっています。法案審議にあたっては、「私たち抜きに私たちのことを決めないで」という障害者権利条約の理念が尊重されたとは言えず、さらに、法によって強制的に傷つけられた身体は元に戻すことはできないうえに、子どもを持つか持たないかを選択する権利を奪われるという重大な被害にもかかわらず、320万円という補償額も納得できるものではありません。

 法は成立しましたが、旧優生保護法被害の問題は根本的に解決したわけではありません。私たちは、自らの意思を伝えにくい人が、法律によって国民としてあたりまえの権利を奪われた事実を重く受け止め、長年の間、心身の痛みや苦悩を抱えて生きてきた優生保護被害裁判の原告や今もって声を上げられない被害者を支援していきたいと思います。一時金支給の手続きや、それに関わる周知と相談などが丁寧になされるとともに、今後の調査と検証の作業、さらには補償の期間やあり方などを含めた法制度上の検討が引き続き行われ、またその過程に障害者団体の実質的な参加がなされるよう求めます。
 なお旧優生保護法を超えて、その後も現在まで実施されている本人の意に反した不妊手術等の実態についても解明し、そうした不妊手術等が起こらないよう私たちは引き続き取り組みます。

「旧優生保護法に基づく優生手術を受けた者に対する一時金の支給等に関する法律」の成立にあたっての声明


不妊手術を是としてきた価値観は、残念ながらまだまだ根深く残っています。
例えば、今もなおとして、障害者施設によっては、施設管理や本人の健康のためとして、恋愛それ自体を禁止しているとこともあります。

現在、精神障害当事者会ポルケでは、恋愛・育児・結婚を切り口にした当事者の体験レビューを踏まえた本作りに参画しています。
マイナスな価値観からパラダイムシフトするとともに、それへの必要なサポートの環境整備が求められます。
当事者の声を通じた課題提起をポルケでは引き続き行ってまいります。(文:山田)

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