【続報・話し合い報告】精神障害者就労定着支援連絡会での障害当事者の 参加拒否に関して

※2020年5月24日 追記
東京都障害を理由とする差別解消のための調整委員会からのあっせん案受託に際し、一部加筆修正をしました。


本件に関する続報をご報告します。(2019年3月6日)


2019年3月4日、私たちの要請に基づき、大田区内にて話し合いの場が開かれました。

東京都職員2名、大田区職員1名、NPO法人まひろから2名、当会から3名の参加がありました。

結論から申し上げますと、非常に受け入れ難いものとなりました。

<公開セミナーへの障害者の参加を拒絶したこと>

話し合いの中で、NPO法人まひろ理事長からは「これは差別ではない」といった意見表明があり、わたしたちは到底納得ができませんでした。

また、その決定が、関係者の事務局会議で行われたことが露呈しました。
(会議の議事録にも残っているようです)

わたしたちは、彼ら全員との対話を要請しましたが、理事長らは拒絶をしました。

同席した大田区職員からも謝罪の言葉はなく、「残念なことになっている」とのコメントに終始し、主体性のない事流れ主義な発言に終始していました。

会議設置者の東京都を含む三者からは、「不快な思いをさせてしまったこと」への謝罪の言葉はありましたが、差別行為をしたことへの謝罪の言葉は一切なかっただけではなく、理事長に至っては「差別ではない」との表明には強い憤りを覚えます。

<事案発生後の対応について>

事案発生後、理事長らは電話のひとつもしてこなかったわけですが、対応の怠惰について認めさせました。

その怠惰を組織対応の問題として認めさせ、継続した話し合いを約束させました。

<今後について>

東京都差別解消条例が定める調整委員会へのあっせん申し立てを要請しています。

同日、本件に関わった大田区職員を障害者差別解消法のスキームに則り、大田区へ相談(通報)をしました。

なお、福祉関係者・メディア関係者等から問い合わせが来ておりますが、すべてを個別対応できない場合があります。

あしからず、ご承知おきください。

精神障害当事者会ポルケ
代表 山田悠平(文責)

(2019年3月6日)


本件に関する詳報と続報をご報告します。(2019年2月22日)


精神障害当事者会ポルケでは、今年度からの障害者雇用促進法改正により精神障害者保健福祉手帳所持者へのインセンティブが働いていること、また一連の中央省庁の障害者雇用水増し問題もあり、障害者雇用の基礎知識、雇用の場面での障害理解や合理的配慮のあり方、伝え方等について学習活動やお話会ワークショップを開催してきました。精神障害者の雇用定着は他障害のそれより著しく低い状況にあり、私たちも雇用環境での合理的配慮の内実やその獲得のプロセスについて関心を寄せてきました。

それらの報告書を携えて、地元行政の障害者雇用を担当する窓口と懇談も行ってきました。ひとえに、精神障害者の雇用環境が良い方向になるようにそういう思いでした。チラシは下記になります。

なお、こちらの連絡会は東京都が設置をした会議体で、東京都の行政区画で6つ運用されています。精神科医療機関、就労支援機関、企業、学識経験者などによる事務局会議をもうけ、企画から運営まで精神障害者が働き続けるため連絡会の開催と、連携のあり方や支援ツールを検討しているとされています。

チラシの対象という表記に、障害当事者の表記がなかったので、念のため、参加が可能かを紹介先に問い合わせました。初めて参加することもあり、やり取りの中で会の雰囲気を知りたいというところもありました。

その後判明したのですが、先述の行政担当者は事務局会議のメンバーでもあり、問い合わせ、掛け合ってもらいました。メールの返信の限りでは、「たぶんNGということはないと思いますが、念のため確認します」そういう流れでした。

しかし、残念なことに、「参加いただく企業が精神障がい自体に理解が無い、力量がないこと。連絡会では合理的配慮をベースに当事者、支援者、企業、医療機関に連携して使っていただけるツールを模索していて、将来的には当事者にもご意見をいただきたいが現状では受け止めるだけの能力が事務局側にもないこと」として、参加それ自体を拒絶されてしまいました。

私達はもちろん、なにか騒ぎ立てるつもりもなく、むしろ勉強させていただいて、前向きな意見交換もできたら嬉しい、そういう心づもりでした。

運営メンバーと協議をし、本件は障害を理由にした差別案件という確認をし、翌日代表が事務局表記にあるNPO法人まひろが運営するアイ‐キャリアに電話をして、その真意を確認しました。

結論は同じでした。
電話対応した事務局員はチラシ文言を持ち出して説明をしました。
「『企業・支援機関・医療機関の効果的な連携のために』とある。当事者の参加は遠慮いただきたい。」
とのことでした。

「『遠慮いただきたい』というのは、参加できないということか」という質問に対して、参加できない旨をはっきりと明言されました。

これは明らかな障害者差別であり、抗議文を送付するので内部で一旦検討してほしい。と伝え、電話を切りました。

その抗議文は以下になります。


精神障害当事者会ポルケ(以下、当会)は、精神障害当事者により構成される東京の城南エリアを中心に活動する障害当事者団体です。

貴法人が管轄する障害者就業・生活支援センター アイ-キャリアが事務局を務める精神障がい者就労定着支援連絡会の平成30年度第4回(2月19日)開催に際して、当会メンバーの障害当事者の参加を拒絶したことに抗議します。「参加いただく企業が精神障がい自体に理解が無い、力量がないこと。連絡会では合理的配慮をベースに当事者、支援者、企業、医療機関に連携して使っていただけるツールを模索していて、将来的には当事者にもご意見をいただきたいが現状では受け止めるだけの能力が事務局側にもないこと」として、企業側等の力量不足を原因とし、また事務局に「受け止める能力がない」として、当事者の会合参加そのものの拒否の合理化は、障害者排除そのものであり、差別的な態度と言わざるを得ません。

また、従前からの当事者参画を踏まえないツール開発の姿勢に強く抗議し、当事者参画の考えを改めるよう強く求めます。国は障害者就労施策を以下のように規定しています。「障害のある人が障害のない人と同様、その能力と適性に応じた雇用の場に就き、地域で自立した生活を送ることができるような社会の実現を目指し、障害のある人の雇用対策を総合的に推進しています。」つまり、障害者就労は障害者の権利に関わることであり、私たち障害者団体の参画は当然認められるべきです。

精神障害者の障害者雇用の定着率の低さは、目下大きな課題であり、連絡会が果たすべき役割は非常に高いことは重々理解しております。当会は障害者就労にかかる支援、職場での合理的配慮等段階ステージで意見交換・解決案をまとめたワークショップなどを開催してきました。報告レポートは担当所管を通じてお伝えしているところです。当会は対話と協働の姿勢で社会課題の解決に関わる意思を表明しつつ、貴法人の当事者参画にかかる姿勢に重ねて強く抗議します。会議開催前日の2月18日(月)までに以下の連絡先に文章での誠意ある回答を求めます。


その後、本抗議文をホームページに掲載しました。
福祉関係者が差別を行ったという事態を私達は深く傷つき、そのことを世に問いたいと思ったからです。

地域の福祉や市民活動関係者から複数電話が寄せられました。
心配をいただく声と同時に当該法人の理事長からの伝言などもあり、正直いささか混乱もしました。

回答文は同日夕方に寄せられました。


第4回精神障害者就労定着支援連絡会にかかる障害当事者の
参加拒否に関しての公開抗議に対する回答

2019年2月1日付の抗議文をいただきましたことに対してご回答させていただきます。
当連絡会事務局会議において、事務局員の方から貴会のご参加についてのお申し出を頂戴し、要綱等を確認させていただきましたところ、対象とならないのではないかと判断いたしました。併せて、当事者の方の声をお聞かせいただくことは不可欠との考えのもと、連絡会におけるツールの検討におきましては、試行していただく当事者の方からもきちんと意見をいただいて参りたいとの結論となっておりました。
しかしながら、これらの回答について、貴会へ事務局員からご返答させていただく際に不適切な回答があり、ご抗議を頂くことになってしまいましたことについて、大変申し訳なく謝罪をさせて頂きたく存じます。
事務局として要綱等の確認を委託元に改めて行わせていただきましたところ連絡会への参加は可能であるとのことでしたので、是非当日のお申し込みを頂きたく存じます。
連絡会事務局といたしましては、さらなる精神障害者の就労と定着をご支援させて頂くべく努めて参りますので、引き続きの御協力をお願い申し上げます。


私たちは当事者参画それ以前の問題として、障害を理由にした排除、差別を問うたつもりでしたが、まるで「参加するしないは要綱等の確認ミス」という説明と不明瞭な謝罪回答に到底納得ができませんでした。

私たちは、公開セミナーに参加できる、できないを焦点化したつもりではありませんでした。公的設置の会議体が障害を理由にして、公開セミナーへの当事者の参加を拒絶したその重大さに気づいてもらえていないことに理解するまでに時間を要しました。

他方で、紹介元の行政からも連絡があり、一連の経緯となぜ私達が抗議をしているか直接説明をしました。

その後、運営メンバーで協議をし、公開抗議という形態でのやりとりをとらず、直接お会いして、お話をして真意をお伝えしようという結論に足りました。
その旨を伝えた文面を部分引用します。


要綱の確認ミスと手続きの話に矮小化されたことは残念でなりません。
要綱の読み取り如何にせよ、公的設置の会議体が運営するセミナーで、障害者という立場を持つ者の参加を拒絶したことは差別的扱いであったと思います。
引き続き文公開抗議文を対応することも検討しましたが、ご了承いただければお顔をあわせてお話を出来ればと思います。
事実関係の確認とひろく再発防止のありかたについてお話を希望いたします。
ご検討ください。
また、来週19日のセミナーが来週に差し迫っている中で、このタイミングでは相互信頼を回復することに困難が予想されます
19日の出席は遺憾ですが見合せます。
今回の件は、まひろさん(※当該法人)のことを従前から知っておりましたし、他の当事者会との話でも評判を耳にするところでした。
それだけに本当に残念でした。
行政の方を通じてのお話にとどまらず、お電話口で対応いただきた事務局のお考えもかたくなのようだったので、今回このような形をとりました。
本件は当事者参画以前の問題です。
繰り返しますが、その意図に関わらず福祉関係者が排除に加担したことは残念でなりません。

話し合いの場をもつか否かご返信ください。


このメールに対しての回答は納得ができるものではありませんでした。
何より残念なのは、この間理事長本人はもとより、事務局スタッフからも電話は一切ありませんでした。

私達は精神障害の当事者組織です。
まるで、精神疾患を患ったことで、加害行為への情状酌量を訴えられているようで、とても当惑しました。
一方で、どこか謝罪もどこか形式的なものに思えてなりませんでしたし、関係者に電話する時間と余力があるのなら、なぜ電話のひとつもできないのかと、差別行為そのもの以上に恨めしい気持ちになりました。

その間、とても複雑な気持ちでしたが電話をかけたこともありました。
取り次いだスタッフは、「理事長は不在にしています。またなにかあれば連絡します」とのことでした。
その回答が、「暖かくなってから会いたい」とは本当に筆舌に尽くしがたい気持ちでいっぱいでした。

私たちが考えていること、思っていることがここまで伝わらないことに悲しさすら覚えました。

代表の私のもとには、複数の関係者から意見が寄せられていました。
「これは抗議するほどのことなのか」
「大人な対応をしろ、しっかり相手と話せないのか」
といった類の先方の考えを多分に組み入れた「善意」ある忠告メッセージが寄せられてきました。

このことがなにより、一層の悲しい気持ち、怒りの気持ちにさせ、私(=代表)は体調への深刻な影響も与える状況となりました。(なっています)

いっそのこと、妥協して暖かくなるのを待とうかと思いましたが、東京都に勇気を持って相談に行くことにしました。

行政の方は電話対応してくださった方から含めて、一様に事態の深刻さをご理解いただき、その日のうちに担当課長ともお会いをし、経緯説明となにに困っているかをお伝えさせていただきました。

その際に、差別解消担当の係の方にもお話を聞いていただき、本件の直接差別性、事案を生じた際の建設的対話の不履行に対しての指摘にも十分なご理解をいただけました。

私達は、東京都に対して、東京都職員同席のもと、事務局会議のメンバーの大田区担当者、NPO法人まひろ(連絡会担当事務局)、精神障害当事者会ポルケによる協議の場を要請しました。

その日は一旦検討ということで引き取っていただきましたが、翌日には要請通り、協議の場が開かれる方向で、NPO法人まひろに指導・助言をしていただけることとなりました。

暖かくなってからがよいと、あれだけの後ろ向きな態度だったので期待もしていなかったのですが、なんとその日のうちに電話がかかってきました。

ちなみに、私は勤務があったのですが、約2時間の間に当該の複数の法人の電話番号から10回以上にのぼっての着信があり、とても薄気味が悪い思いをしました。

それまでに、電話をかけてこなかったのが、監督行政からの一言でここまで態度を一変させたことに、怒りの気持ちを超えて呆れた気持ちすら覚えます。

私たちは、今回のことはとてもおかしいことだと思っています。

障害者差別解消法や東京都差別解消条例に照らしても、明らかな直接差別です。
しかも、これが行政設置の会議体の事務局会議によって合意されたプロセスで起きたということです。

私たちはちゃんと彼らの言葉を聞いてみたいと思っています。
事務局会議でなにが起きていたのか、より詳しい状況を知りたいと思っています。事実を隠蔽することなく、詳らかにしてほしいと思っています。

障害福祉に携わるものがむしろ障害者を差別をし、その事実を矮小化し、その行き違い(百歩譲ってです)の解消に向き合わない。
そして、一部のその周辺の関係者の事流れ主義の「忠告」。

こういう地域に私たちは暮らしていると思うと、なんともやるせない気持ちになります。

そして、こういう事も含めて、彼らに「対話」として接しなくてはいけないことについて、なんと答えてくれるでしょうか?

団名にあるポルケはスペイン語で、なんでだろう、疑問といった意味です。
この間、当事者としての声に耳を傾け、ともに怒り、励ましの応援してくれる会員や関係者に心より御礼を申し上げます。
私はどこかブレてしまいそうなところを大いに支えてもらえました。

状況、また追って報告致したいと思います。

精神障害当事者会ポルケ
代表 山田悠平(文責)

(2019年2月22日)


 

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