【報告】ポルケ学習会「当事者活動が担う地域社会での役割とは? ~ 精神障害者にも対応した地域包括ケアシステム実施に向けて~」
(企画趣旨・概要)
精神障害を経験する仲間が集う当事者活動は、大小さまざまな形で展開されてきました。マイノリティー同士の居場所・交流、助け合い活動、学習活動など取り組む内容はさまざまです。お互いを尊重し普段なかなか口に出来ない胸の内を共有できる仲間たちとの場は格別なものです。
そのようなピアサポートの役割が今年度から始まっている第四次障害福祉計画において、重点施策にも謳われるようになりました。当事者活動が楽しみや仲間づくりとは別にして、社会の機能に応えようとした場合、そこで求められる役割とは何か、を学ぶべく学習会を開催しました。
日本のピアサポート研究の第一人者の相川先生をお招きした学習会を開催しました。後半には、関口明彦さん(日本ピアスタッフ協会監事)をお招きして、パネルディスカッションを行いました。当事者会メンバーもパネラーとして参加しました。
(実施日時・会場)
〇日時:2019年1月20日(日)13:30~16:00
〇会場:大田区立入新井集会室大集会室
(講師)
〇相川章子(あいかわ あやこ)さん
〇プロフィール
聖学院大学人間福祉学部教授 博士(人間学)精神保健福祉士。
千葉、東京、埼玉、新潟等で医療機関や保健所のデイケアをはじめ地域生活支援センターや授産施設等の社会復帰施設(旧精神保健福祉法)、グループホーム等の精神障害者の地域生活支援にソーシャルワーカーとして経験を重ね、現在は専門学校でのキャンパスソーシャルワーカーを継続。
2003年より現職、10年前からピアサポート、ピアスタッフに魅了され、現在は各地のピアサポートに関する講座等にかかわる日々。主な著書は「精神障がいピアサポーター」(中央法規出版)、「かかわりの途上で」(へるす出版)等。
(参加者)
精神障害当事者、ピアスタッフとしてお勤めの方、障害福祉支援関係者、行政職員、学生、法律家などさまざまな方に参加をいただきました。北関東から参加いただいた方もいらっしゃいました。58名の方にご参加いただきました。ご来場ありがとうございました。
(今後に向けて )
当会が所在地とする大田区においても、来年度から精神障害者にも対応した地域包括ケアシステムの会議体が始動するといわれています。担当部局と意見交換を重ねてまいりました。ピアサポートを行政としてどのように応援していけばよいか、建設的な意見交換ができていること大変うれしく思っています。
一方で、ピアサポートとはなにか?というそもそも論が、大田区の福祉関係者、家族会、行政などの関係機関には残念ながら、蓄積ができている状況でもないように思っています。
福祉関係者の中にはどのようには「ピアサポートに関わってもらってよいかイメージがつかない」そういった声も散見されています。
今回の学びはその一助になればそういう思いもあって開催しました。もちろん、当事者会として、一個人としてピアサポートについて学びを深めていくことは大事とも思っています。今回講師の相川先生からは、ピアサポートの歴史についても言及くださいました。「愚者は経験に学び、賢者は歴史に学ぶ」-個人の思い付きではなく、歴史に学ぶこと、とても大事に思っております。
相川先生からの講演で印象的だったのは、日本ピアスタッフ協会設立にふれて、非障害者との「協働」ありきの姿勢に対して、応援者としてある種の心配をされたというものでした。協働というと、役割と責任を共有する対等な関係が大事とされていますが、既存の専門職(非障害者)たちと、対等と言える状況がはたして担保できているのか、できたのか。今もなお色褪せない重要な論点のように思います。
地域包括ケアシステムは、国が進める福祉施策の重要なキーワードのひとつとなっていますが、社会保障費の抑制と表裏一体ともいわれています。悲しいかな、ピアサポートの推進はそのような潮流を見据えて注目をされているきらいも否定できないように思います。
ピアサポートが果たしてきた根源的な役割や大切なものはなにか。これに常に立ち返りながら、もっと社会評価を高めていかなくてはいけません。他のエリアと当事者会とも交流・意見交換できたのはこの企画の成果の一つとも思います。これからも当事者会活動の普及について漸進的に取り込んでいきたいと思います。(文・山田)
(運営)
〇主催:精神障害当事者会ポルケ
〇後援:おおた社会福祉士会、おおた区民活動団体連絡会、全国「精神病」者集団、大田障害者連絡会
〇助成:草の根市民基金・ぐらん