【活動報告】第103回お話会レポート(仕事に関する相談の仕方、普通の人生を送れないことなど)
ようやく空が高く感じられることが多くなってきた9月26日、第103回お話会が東京都障害者福祉会館で行われました。今回は平日夜の開催で、窓を開けるとひんやりと心地よい空気が会場に入ってきました。初参加の方3名を含む16名の参加がありました。
◇仕事に関する相談の仕方
「最近働き始め、ぐったりしてしまい家では何もできないのがつらい状態。次の受診時に主治医に働き始めたことは言おうと思うが、つらいと伝えると『働かない方が良い』と言われてしまうと思うから、あまり話さないつもりだ」と、相談するに当たっての難しさが一人の参加者から話されました。
体調や生活をよくしたいと思っても、仕事のことも関連すると、主治医などにどのように相談するか迷ってしまうことが私たちにはしばしばあります。例えば、「仕事上の人間関係の悩みを話したら、自分自身の障害特性に原因があると判断され薬の増量などを言われた経験」「現在は問題なく働けていると言うと、診断書などに支援は不要のように書かれてしまい、必要な時にサービスを受けられなくなるかもしれない不安」などが聞かれます。
本当は相談したいのに、医療の判断が生活に望まない影響を及ぼすかもしれないと思うと、「やはり伝えるのはやめておこう」となりがちです。
また、伝えることに苦労があるという人もいました。「今は福祉事業所に通所しているが、就職を考えている段階。そのためにも生活リズムを安定させたいのだが、うまくいかないので、福祉や医療の支援者に相談している。しかし『事業所に通所できているから大丈夫だよ』と言われ、具体的な改善法について相談したいのにうまく伝わらない」。励ましはありがたいが、なかなか話が進まず、自分の伝え方が良くないのだろうかと悩みます。また、「あなたの伝え方の悪さは障害特性に起因するからこのように工夫すべき」と本人に改善すべき原因があるようにされることもままあります。
一方、今良い支援が受けられているという言葉もありました。「A型事業所の支援員が時々『今困っていることはない?』と声をかけてくれる。自分から相談すると際限なく悩みを話してしまい逆に後悔することが多かったので、声かけのタイミングで相談ができ、困っていない時には『今は大丈夫でこういう状況です』と振り返りにもなり、自分には今この支援が合っていると思える」。
これらの話を受け、また別の人が「自分は、大きすぎる支援がつらい」と話し始めました。「障害者雇用で働いており、支援者や上司らとの面談が毎月ある。もう仕事にも慣れてきてもっとチャレンジしたいのだが、支援者は支援で改善できることを聞きたいのだろうか、『何か困っていることがあれば言ってほしい』と繰り返す。自分の困難だけを引き出そうとされていると感じる。挑戦できる機会がほしいのにその話はなく、『支援的な』関わりを少し息苦しく思ってしまう」。
仕事を含めた生活を自分らしく送るためのサポートがあると、私たちは安心のもとに進むことができます。しかし、支援者の姿勢や制度の仕組みなども考えながら相談し、話し合うことに難しさを覚えている人は多くいます。私たちが主体となってサポートのあり方をデザインできるような支援が期待されます。
◇普通の人生を送れないこと
前回のお話会でも「同世代の人と比較して不安になる」という話があがりました。症状による苦しさに加え、周りと同じように歩めなくなり、自分だけが置いて行かれるような感覚はとてもつらいものです。
今回はある参加者から、「友人の人生をうらやんでしまうようになって苦しい」との言葉がありました。「学生時代の友人たちは、仕事も軌道に乗っており、結婚の話も増えてきた。SNSでも皆のポジティブな近況があふれているのを目にし、病気になって進めない自分を強く意識してしまって、大きく体調を崩した。今は友人たちと連絡を取るのも難しいが、いつかまた私も戻れるだろうか」。
特に少し年上の参加者たちが、これに対してうなずいたり経験を話したりしました。「自分も同じような気持ちで長く過ごした。今は、以前の生活に戻るというよりは、違った形で取り戻せている感覚がある」。「私もどうしても人と比べてしまいずっとつらかったが、自分は普通には生きられないんだなとあきらめた。そうするとそこから、自分の生き方やスタイルが少しずつできてきた」。
この言葉に対し、話題を出した人は「自分も、自分は普通じゃないと思います」と答えました。「普通じゃないのだと思いながらも、自分が障害者になったことをまだ受け入れられていないのかも。どうやったら受容できるのか」。
「普通」の人生というものがあり、そこから外れている自分は普通ではない、病気を機に自分は普通ではなくなった、ということに苦しむ人は多くいます。普通と言っても色々で、様々な生き方が尊重されると分かってはいます。それでも、普通の人を中心に作られている社会の中で生きづらさを抱えがちになること、そして偏見も残念ながらあること。そういうものと直面しなければならないのはつらいことです。
さらに、「自分に障害があることを受け入れた方が良い」というメッセージを受け取ることもよくあります。「あの当事者は、まだ障害受容ができていない」という評価を下されることもあります。
自分を受け入れるというのは大事なことのひとつですが、それぞれに時期があり、障害のある私たちにとっては特にとても大きなことです。自分のタイミングで、仲間とも一緒に話し合う中で、次第につかんでいけるものではないでしょうか。
◇おわりに
お話会の最後の時間には、一人一人から感想が共有されました。
「自分の弱さを出せるというのは本当に強いことだと思った」
「仕事は今はつらいが、みんなの経験を聞いて自分なりに頑張っていこうと思えた」
「それぞれの言葉からとても勇気をもらった」
安心できる場だからこそ出てくる言葉、そこではじめて語れる言葉を、私たちはたくさん持っています。お話会も多くの仲間にとって安心な場となるよう、これからも続けていきます。みなさんの参加をお待ちしています。
この取り組みは、公益推進協会釋海心基金の助成により実施をしています。(相良)