コラム:おおた障がい施策推進プラン(素案)パブリックコメントについて

おおた障がい施策推進プランのパブリックコメントが年末から年始の期間に行われました。

おおた障がい施策推進プランは、大田区障害者計画、障害福祉計画、障害児福祉計画、発達障害児・者支援計画を包括した行政計画です。障害福祉計画改定のタイミングに合わせて3年に一度見直しがされます。区市町村は、国の指針に基づき、地域課題に鑑みた策定がもとめられています。お住まいそれぞれの地域で改定が行われているところかと思います。

パブリックコメントは、各最終決定の前に案の段階で公表し、地域住民から寄せられた意見について、区の考え方を公表し、場合によっては案の改訂を行う制度です。
いつもは説明会されるところですが、昨今の新型コロナウィルスの感染拡大防止策として、YouTubeでの説明配信が行われました。手話通訳をつけるなど、様々な障害のある人への配慮がされた配信となっていました。残念ながらパブリックコメント終了後には削除されてしまったようです。これまでの団体要望書や自立支援協議会という会議体に参画する中で、気になるか所を意見させていただきました。

 

 

■計画策定段階からの障害当事者の参画について

大田区障がい者施策推進会議は、おおた障がい施策推進プラン策定おける検討を担う重要な役割があります。しかし、この会議体では、知的障害、精神障害、発達障害、高次機能障害、難病等の障害当事者の参画が行われていません。他方で、障害者権利条約では、政策決定過程への障害当事者の参画が求められています。大田区障がい者施策推進会議の要綱を改変するなどして早急に委員構成を改めてください。
 
 

■計画策定における地域参画について

新型コロナウィルスの影響下により諸般のスケジュールに変更が生じていることは承知していますが、新おおた重点プログラム策定の際のように、地域参画をすすめることは総じて地域力推進の観点からも重要と考えます。次期計画改定においては区民ワークショップや大田区自立支援協議会等での意見交換会の実施など地域住民の参画を進めてください。
 
 
 
 
■「課題 1-1 サービスの実施回数・頻度等の量的な充実が求められています」について
大田区自立支援協議会の「障害福祉サービス利用に関わるリスト作成」のワーキンググループの検討においてもサービスの認知や事業者の情報取得について課題が確認されてました。ワーキンググループでの検討を踏まえて、基幹相談支援センターでの情報発信、収集の強化、民間事業者連絡会の情報リソースの積極的提供等を促進してください。
 
 
■課題 1-3 「福祉人材の確保・育成・定着を支援し、サービスの質を向上させることが 求められています」について
障害福祉に関わる人達の安定した雇用環境は、サービスを受ける障害当事者にとってもつまるところ重要なものです。障がい者施策推進会議において論点となった福祉人材の高度かつ包括的な研修の実施も必要性を承知していますが、離職者防止の観点から大田区が積極的な施策推進を期待します。福祉職はその業態の特徴からいわゆる燃え尽き症候群として、離職率が高いのも事実です。現場スタッフの心の疲弊の対策について事業者が策を講じるのも難しいと聞きます。ケアラーケアの考え方が国内でも認知が進んでいます。今後、障害福祉をはじめ様々な福祉職の人達の安定した就業を促進するための課題の調査と対策を進めてください。
 
 
■課題 2-1「本人が望む暮らし方の実現を地域で支える仕組みづくりが求められています」について
令和元年度大田区障がい者実態調査において希望する暮らし方についての質問を挙げていますが、現状においては所得補償やサービスが満足する形で利用できないという状況を踏まることも重要と考えます。つまり、親との同居も選択肢として尊重されるべきですが、その暮らし方を現実として選ばざるを得ないということも十分想定されます。このように本人の希望というものは書面アンケートのみでは、把握をすることは困難が予想されます。
「本人が望む暮らし方の実現を地域で支える仕組みづくり」のためには、より重層的な実態調査が欠かせません。今後の実態調査においては障害者団体や事業所と協働して、地域力を活かした実態調査が行われることが必要と考えます。
 
 
■課題 3-1「職場等における障がいへの理解を一層促進することが求められています」について
精神障害の領域では障害者雇用促進法の改正を受けて障害者雇用での働き口を探す人が増えています。他方で、多くの場合は中途障害であることや偏見の問題等から自身の障害のことを言語化したり、合理的配慮を求めることが経験的に乏しい人が多いのも事実です。理解促進のためには周囲の暖かい理解も必要ですが、当事者のエンパワーメントも必要です。このような観点に鑑みて、障害者団体の協働やピアサポートを課題解決のために活用することが必要と考えます。
 
 
■課題 3-2 「働くことを希望している人の就労と定着の支援が一層求められています」について
就労移行支援や定着支援のサービスにおいては一部、支援職と雇用者のみの話し合いを以って当事者不在でその場しのぎの問題解決を図るところもあるようです。それは決して望ましい方法ではありません。当該支援の実態把握を大田区自立支援協議会のワーキンググループで行っていますが、その検討を踏まえて制度の趣旨に適う支援が行われるようモニターをすることも併せて重要と考えます。
 
 
■課題 4-1「安心して相談・受診できる健康・医療体制の充実が求められています」について
精神障害者にとって精神科医療は必要な支援スキームのひとつです。しかし、診療時間については診療報酬等の制約があり希望する診察時間を確保しにくいという課題もあります。また、医師の力量によっては当事者側が主訴を事前にペーパーにまとめるなどの自助努力を求められることがあります。このような安心して医療を受けるためには、患者側の工夫を求められるのも事実です。しかし、時には病歴の浅い当事者は自助努力の方法もわからず、つまるところ医療不信を招き、治療中断をまねき疾病の再発が起きることもあります。このように医療との付き合いを学ぶ機会が少ないことは大きな課題です。
もとより当事者が安心して受けたい医療を受けることは至極当然ですが、現状に即して患者側がエンパワーメントされる機会を保つことも重要です。このような観点に鑑みて、障害者団体の協働やピアサポートを課題解決のために活用することが必要と考えます。
 
 
■課題 8-2「区民や地域を対象とした障がい理解の一層の普及・啓発が求められています」について
2018年施行の東京都障害者差別解消条例においては、障害の合理的配慮の提供については、法の上乗せとして法的の義務として規定されています。また、昨年の内閣府障害者政策委員会における「障害者差別解消法の3年後の見直しに関する意見書まとめ」においても同様の規定の期待が示されました。障害の合理的配慮に関する規定が強化される中で、事業所の一部からは不安の声も漏れ聞くところです。
このような懸念を応えることは、法の目的とする「障害の有無によって分け隔てられることなく、相互に人格と個性を尊重し合いながら共生する社会の実現」に向けて必要な措置です。基礎自治体として、障害理解の研修啓発の必要性がますます高まってきます。とりわけ、法や条例が期待する障害の社会モデルに基づいた障害理解啓発が必要で、精神障害のような「見た目ではわかりにくい障害」「固定化されていない断続的に現れる障害」についての視点からの啓発も急務です。研修の予算補助等を含めて地域理解をすすめるための具体的なアプローチが必要と考えます。
 
 
■課題 9-1 「防災・防犯対策のため、相互支援体制を充実させていくことが求められています」について
2019年の多摩川の一部氾濫等防災に対する関心が高まっているように思います。大田区ではマイタイムライン講習会を実施し、2019年12月においては障害者向けのバージョンを行うなど漸進的にでもその啓発を行うことは重要と考えます。他方で、防災計画策定においては障害者団体の参画がありません。地域の多様なニーズを踏まえるためにも防災計画策定においても障害者団体の参画が必要と考えます。
避難行動要支援者名簿については精神障害者の記載が期待される基準値が不明です。名簿に記載することで得られるであろう支援スキームの目安等を具体化することが必要と考えます。当事者にとっては、プライバシーの問題と天秤にかけても、メリットがあまり実感できないので名簿記載に積極的になれない状況があります。このような状況を鑑みて、避難行動要支援者名簿の認知を向上することが必要と考えます。
 
 
■課題 9-2 障がい特性に応じた災害避難所の充実が求められています」について
福祉避難所においては発災時には援護者の随行が条件となっています。発災時においては日頃の支援のスキームが活用できるかは未知数なので、援護者の随行を条件にするルールは廃止したほうが良いと考えます。このような検討の場を開いてください。
 
 
■課題 10-2 「障がい者の意思決定や財産管理を支援する取組みが求められています」について
成年後見制度は障害者権利委員会が廃止を求めている制度です。障害を理由にして法的能力を制限するスキームは差別そのものです。大田区においては、先の成年後見制度利用促進計画を撤回することを望みます。想定されるニーズに対しては、既存の制度で代替は十分可能です。財産管理の場合は信託制度の活用をする。消費トラブルにおいてはクーリングオフ制度を利用するなどです。成年後見制度については、権利制限をはじめ問題が孕むことを合わせて重々周知することが必要です。その意味において、計画のモニタリングの指標を利用実数ではなく、成年後見制度の認知度としたことを歓迎します。
また、新たに設置される成年後見制度利用促進のための協議会運営においては、精神障害者や知的障害者など利用を想定されている障害者団体の参画をすすめてください。成年後見制度を利用した人たちの声に耳を傾けてください。
 
 
■p47「「地域力」による支援と共生の地域づくり」について
様々なアプローチやアイデアが必要と考えます。現状、想定している取り組みがあれば計画に記述すると良いと思います。また、具体的な施策事業を公募することも必要と考えます。
 
 
■p76「福祉施設の入所者の地域生活への移行」について
前回のプランにおいては精神科病院からの地域移行目標値の記載がありました。本プランにおいても記載されることが必要です。
また、精神科病院や入所施設にいる障害のある人たちの意向確認を定期的に実施してください。文京区では過去に同様な取り組みが行われています。定期的に官民協働でアウトリーチすることで、地域へ戻りたいとい当事者の声に積極的にアプローチしてください。現行の地域生活支援コーディネーターの人員ではカバーできていません。人員を拡充することを検討してください。
 
 
■p89-92「地域生活支援事業」について
ピアカウンセリング事業の記載が必要と考えます。利用数、想定利用数の記載含めて対応をお願いします。ピアカウンセリングは、同じ障害をもつ者同士の経験の分かち合いを通じてエンパワーメントを図る手法として、1970年代以降のアメリカの自立生活運動から世界各国で取り込まれる重要なプログラムです。大田区においても実施をしていますが、利用についてはここ数年諸所の支障が改善されていない状況です。要項改定、予算措置を含めて対策をすすめてください。特に、新型コロナウィルスの影響に鑑みて電話での実施をするための回線設置等予算取りをしてください。
 
※なお、年末年始の対応で会議で確認できず、個人名での提出となりました。(山田)
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