令和4年度に向けた障害福祉・精神保健・地域防災についての要望書(大田区)

精神障害当事者会ポルケが拠点とする東京都大田区の行政に要望書を提出しましたので公開します。


 

1.新型コロナウィルスの影響下での対策をすすめてください

①精神障害者の死亡リスクに留意した対応

精神障害がある人はない人に比べて新型コロナによる死亡率が1.8倍高い(精神医学誌「JAMAサイキアトリー」)であることが最新の調査で明らかになりました。今後の感染防止や社会保障等に係る施策について、優先度を挙げるよう留意してください。

②公共施設での感染防止対策備品の貸出

大田区では地域力応援基金などで感染防止対策の消耗品費購入に広く助成をする仕組みを設けています。当会も活用したところですが、備品購入枠としてパネルディスカッションの購入には金額に制限等があり、少し勝手が悪いものでした。限られた財源かとも思われますので、レンタル可能な感染防止対策の備品は各公共施設では備え付けを進めていただければと思います。

③ケアラーケアの体制の強化

対人支援は感情労働も称さるように、福祉の仕事は時にはうつ症状を伴ういわゆる燃え尽き症候群が起きやすい職種です。業界の慢性的な支援の担い手不足は深刻ですが、この数年でも心身を壊して退職する福祉従事者を見てきました。最終的には、支援者不足は障害者の必要な支援が提供されないという課題に帰結します。このような課題を漸進的にも解消するために、福祉の担い手がケアを受ける「ケアラーケア」の仕組みを促進するよう大田区障がい者総合サポートセンター等で相談窓口の設置を進めてください。

④ピアカウンセリング事業(地域生活支援事業)の促進

現在、不安な気持ちで過ごす精神障害のある人が大勢います。ピアカウンセリングは障害者という立場性に依拠した相談の仕組みとして従前から大田区でも展開されるものです。一般相談支援の枠組みとは質的に異なるものです。感染防止対策に鑑みて、電話やオンラインを活用した体制整備を促進ください。

⑤所得補償制度の拡充

心身障害者者手当並びに心身障害者(児)医療費の助成の精神障害者保健福祉手帳2級保持者までの拡充をお願いします。

2.障害者差別解消法改正の施行を見据えた施策をすすめてください

障害者差別解消法改正が本年可決成立いたしました。障害の合理的配慮の法的義務化、障害のある家族や支援者を法のスキームに加えることなど、より踏み込んだ内容が盛り込まれています。今後、基本方針の整備などが進むものと承知しています。内閣府障害者政策委員会での議論によると、基礎自治体においては、事例蓄積や国や東京都と連携したワンストップ窓口による対応等が求められることになろうかと思います。そのうえで、東京都広域支援相談員の連携、並びに専ら課題が重いとされる精神障害領域の相談業務について当事者団体を含む民間委託を進めてください

 

3.障害の合理的配慮促進に関する施策を加速してください。

精神障害当事者会ポルケは、2019年に大田区後援事業に係る障害の合理的配慮の提供を促進することについての陳情を提出いたしました。本件については継続審議となっていますが、前向きな検討をお願いします。

合理的配慮の提供を民間事業主に義務付ける改正障害者差別解消法が2021年5月に可決、成立しました。これまで、合理的配慮の義務付けは国や自治体のみで、民間事業者には努力義務となっていましたが、今回の改正によって、今後は法的義務として配慮提供が求められることとなります。

他方で、障害者政策委員会(内閣府)の検討場面では民間事業者から懸念の声もあがっていたところです。無用な混乱が起きないように、法が目的とする「全ての国民が、障害の有無によって分け隔てられることなく、相互に人格と個性を尊重し合いながら共生する社会の実現に向け、障害を理由とする差別の解消を推進すること」に鑑みて、基礎自治体として以下の具体的な取り組みを行うことを提言します。

①障害の合理的配慮に資する区が保有するサービスや器具を情報提供すること。

②区が名義後援をする民間事業について合理的配慮の情報提供を積極的に行うこと。

③区の公共施設窓口で付帯設備の一覧に磁気ループや筆談ボードなどを付記すること。

④障害理解をテーマとする商店街や民間事業者連絡会の研修に補助金を拠出すること

⑤バリアフリー推進整備を促進するために、東京都の課題対応型商店街事業

(買物弱者支援事業については補助率9/10)を積極的に活用するよう区内の商店街に周知徹底をすること。

 

4.大田区における精神障害者の当事者の参画をすすめてください

 日本が批准した障害者権利条約では、すべての政策決定過程への障害当事者の参画が求められています。これにより国内の運用改善が進んでいますが、大田区障がい者施策推進会議、大田区自立支援協議会(本会委員)においては精神障害当事者の委員は不在の状況が続いています。大田区においてもさらなる精神障害者の当事者参画を推進する必要があります。

 これまでの精神障害者の参画については家族会がその代わりを担ってきましたが、期待される役割や規範は異なるものです。家族会の会議体参画は否定されるものではないですが、当事者参画についても推進をお願いします。他方で、担当課からは、一部定足数の兼ね合いで従前の参加枠の整理が難しいとの回答を得ています。この状況を見据えて、当事者参画について着実に進むようお願いします。

①当事者参画増を念頭に置いて、定足数の運用規則変更を加えること

②障害当事者の委員増に伴う謝金等の必要予算措置を図ること

 

5.大田区立障害者福祉施設整備基本計画を見直してください

 大田区立障害者福祉施設整備基本計画について慎重な審議をお願いします。令和2年度大田生活実習所、南六郷福祉園・くすのき園、新井宿福祉園の大規模な増改築が突如として示されました。この計画については、大田区障がい者施策推進会議、並びに大田区自立支援協議会などの関係の障害福祉の会議体では、未審議のまま計画自体が先行しています。地域住民向けのパブリックコメントを行ったようですが、「昭和 53 年に東京都が大田生活実習所を新築した際に覚書を交わしたと聞いている。内容を遵守してほしい。」といった切実な声が聞かれる一方で、南六郷福祉園及びくすのき園においては、1件もパブリックコメントが集まっていません。

老朽化が進んだことによる防災の観点から、整備が進むものと承知していますが、今後の数十年の活用を見据えると地域住民や障害者団体等への丁寧な意見聴取が必要と考えます。

もとより区内の精神障害施設は知的障害に比べて圧倒的に少ないです。限られた財源を活かして、引きこもりの人や高次脳機能障害者や精神障害者らもより地域で安心して過ごせる居場所機能が拡充できるよう俯瞰的な視点をもって同計画の見直しをしてください。

 

6.地域防災計画に精神障害者の課題感を反映させてください

防災安全対策特別委員会6月18日では修正方針が示されました。修正についての留意事項として「多様な視点を考慮した防災対策の推進」が示され、要配慮者対策(高齢者・障がい者・乳幼児)が項目として挙げられていることを歓迎したいと思います。しかし、本来であれば経過での途中聞き取りではなく、仙台防災枠組みにあるような「政策・計画・基準の企画立案及び実施」から当事者参画が進む必要があります。防災と福祉についての制度運用についての横断的な検討の場を作ってください。また、当事者参画にあたっては、これまで全般的に精神障害者の参画は遅れがちな状況があります。障害者団体からの推薦を設けること、多様な障害種別が考慮されること、障害のある人と家族の立場をわけた整理が必要であることを強調したいと思います。この間当会のプロジェクトでは、防災に関するアンケート調査等に取り組んでいます。本年については、ヒアリングの場をもうけ、今後の施策に活用していただくことを希望します。

 

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