【ご報告】2021年度大田区予算要望に係る提言事項について

1.新型コロナウィルスに対する措置についての提言

 新型コロナウィルスの終息が見えない状況で、精神障害当事者の暮らしにも大きく悪影響が及んでいます。虐待をはじめ様々な暮らしに関する問題が顕在化しています。安心した地域生活のためには万全の感染症対策と罹患した場合の医療体制があることが望まれます。また、感染症対策によって、コミュニティからの分断が起きないようにすることも大切です。これらの観点から、下記についての予算措置をお願いします。

  • 精神障害者へのPCR検査について

安心した地域生活をおくるために精神障害がある人へのPCR検査を無償実施してください。

  • コロナ禍での相談窓口の創設について

他科受診の拒否や虐待の問題等をはじめ、コロナ禍における人権問題を扱うワンスポットの相談窓口を設置してください。

  • 社会保障の観点でのオンラインコミュニケーションについて

所得補償の問題やこれまでの教育機会の喪失等で、オンラインコミュニケーションに必要なデバイスやネット環境を保持できない精神障害のある人もいます。社会保障の観点から、購入費・回線利用料の補填をしてください。

  • 罹患した場合のプライバシー配慮について

大田区としては「新型コロナウイルス感染症に関する区の公表の考え方」を示しているところですが、これに則り、罹患した場合のプライバシー配慮を行い、人権侵害が起きないようにしてください。

 

2 障害理解啓発の取り組みについての提言

 2018年施行の東京都障害者差別解消条例においては、障害の合理的配慮の提供については、法の上乗せとして法的の義務として規定されています。また、今春の内閣府障害者政策委員会における「障害者差別解消法の3年後の見直しに関する意見書まとめ」においても同様の規定の期待が示されました。障害の合理的配慮に関する規定が強化される中で、事業所の一部からは不安の声も漏れ聞くところです。

 このような懸念に応えることは、法の目的とする「障害の有無によって分け隔てられることなく、相互に人格と個性を尊重し合いながら共生する社会の実現」に向けて必要な措置です。基礎自治体として、障害理解の研修啓発の必要性がますます高まってきます。とりわけ、法や条例が期待する障害の社会モデルに基づいた障害理解啓発が必要で、精神障害のような「見た目ではわかりにくい障害」「固定化されていない断続的に現れる障害」についての視点からの啓発も急務です。これらの啓発のカリキュラム開発や実践について当会も取り組んできました。また、2019年実施の大田区主催の障害者差別解消法研修に当会から講師を派遣させていただきました。そのうえで以下に関する予算措置を提言します。

①大田区職員対する研修に障害の社会モデルを基礎とした精神障害に係る内容を実施すること

②区立中学小学校で精神障害をはじめダイバーシティをテーマにした理解啓発の授業を実施すること

③大田区障がい者総合サポートセンター(さぽーとぴあ)で実施する福祉従事者向けの研修に障害当事者が講師を務める啓発研修を実施すること

④民間事業者が実施する障害者差別解消法に関する研修について補助事業を行うこと

 

3.ピアカウンセリング事業(地域生活支援事業)に関する提言

 ピアカウンセリングは、同じ障害をもつ者同士の経験の分かち合いを通じてエンパワーメントを図る手法として、1970年代以降のアメリカの自立生活運動から世界各国で取り込まれる重要なプログラムです。大田区においても実施をしていますが、利用については諸所支障が改善されていない状況です。予算措置を含めて対策をお願いします。

  • ピアカウンセリング利用についてのわかりやすいポンチ絵を作成してください。
  • ピアカウンセリングの利用に関する案内チラシを区内の障害者団体、福祉施設に配布してください。
  • ピアカウンセリングの担い手を広げるための研修事業を実施してください。
  • 障害特性に鑑みて、電話での利用を認めてください。(専用の電話回線を設置してください)

 

4.大田区における精神障害者の当事者参画の在り方についての提言

 日本が批准した障害者権利条約では、政策決定過程への障害当事者の参画が求められています。これにより国内の運用改善が進んでいますが、大田区障がい者施策推進会議、大田区自立支援協議会(本会)においては精神障害当事者の委員は不在の状況が続いています。大田区においてもさらなる精神障害者の当事者参画を推進する必要があります。

 これまでの精神障害者の参画については家族会がその代わりを担ってきましたが、期待される役割や規範は異なるものです。家族会の会議体参画は否定されるものではないですが、当事者参画についても推進をお願いします。他方で、担当課からは、一部定足数の兼ね合いで従前の参加枠の整理が難しいとの回答を得ています。この状況を見据えて、当事者参画について着実に進むようお願いします。

  • 障害当事者の委員増に伴う謝金等の必要予算措置を図ること
  • 当事者参画増を念頭に置いて、定足数の運用規則変更を加えること

 

5.おおた障がい者施策推進プラン個別施策(4)サービスの質の確保・向上についての提言

 前期の同プラン策定にあたり実施された「大田区障がい者実態調査報告書」(平成29年3月)からは、「サービスを受けるまでに困ったこと」という調査項目があります。これによると、18 歳未満全体・18 歳以上全体のそれぞれの対象においても、サービスを受けるまでに困ったこととして「制度や手続きがわかりにくい」が最も高かったです。このことからも、利用者にとっては、サービスの情報取集や各種手続きについて煩雑に感じる状況が確認されています。一方で、同計画における「サービスの質の確保・向上」の個別施策の主な取り組みとしては、「福祉人材の育成・定着支援」「指導検査等の実施」「福祉サービス第三者評価の受審促進」といった項目はありますが、サービス利用に関する事項は特に明記がありません。サービスそれ自体の認知の向上と手続き負担の軽減は、つまるところ「サービスの質の確保・向上」のためには欠かせないことから、サービス利用に至るまでの手続き保障をは必要です。さらなる的確な行政窓口での情報提供が、必要と考えられます。また、同計画が掲げる「個々の状況に応じて適切なサービスを選択できる」という観点からも、福祉サービスの利用希望者と提供事業所とのマッチングが重要になります。

 2019年度においては大田区自立支援協議会地域生活部会のワーキンググループにおいて、各種サービスの情報提供の実態把握と今後のあり方を提起し、検討を行いました。障害福祉サービスを利用する障害者や家族が負担なく、安心して障害福祉サービスを開始できるように、民間の連絡会等が作成した事業者リスト等も活用した障害福祉に関する情報の一元化とそれに関する責任を行政内で明確し、必要な予算措置を講じてください。集約された情報については、障害福祉課、地域福祉課、健康づくり課等で共有し、障害者団体や相談支援事業所や精神科病院等にも提供してください。

 

6.おおた障がい者施策推進プラン個別施策(6)地域生活移行支援の充実についての提言

 精神科病院や入所施設にいる精神障害のある人たちの意向確認を定期的に実施してください。文京区では過去に同様な取り組みが行われています。定期的に官民協働でアウトリーチすることで、地域へ戻りたいとい当事者の声に積極的にアプローチしてください。現行の地域生活支援コーディネーターの人員ではカバーできていません。

 

7.おおた障がい者施策推進プラン策定検討過程での障害者団体の参画の促進に関する提言

 大田区自立支援協議会の委員の関連団体においても同プランへの認知が決して高くありませんでした。地域住民への周知を広げるためにも、パブリックコメントにとどまらず、同計画の策定段階からの障害者団体等の住民参画を進めてください。

 

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