【活動報告】茨城県土浦市職員研修に登壇ー障害者差別解消法をテーマに

2024年4月1日に障害者差別解消法改正法が施行されます。民間事業者に障害の合理的配慮の提供が努力義務から法的義務にアップデートされます。法改正をきっかけに、民間事業者や行政などで研修の実施が増えています。精神障害当事者会ポルケでは茨城県土浦市での職員研修に講師の役割をいただく機会がありました。各地での研修に障害者団体の参画が求められています。研修の実施などでご協力できることがあればお気軽にお問い合わせください。

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当日の研修の様子は、ポルケ写真展企画でご協力をいただいた「NEWSつくば」の柴田大輔さんに取材をいただきました。

▼「当事者との対話が重要」 精神障害を初のテーマに 土浦市が職員研修 (外部リンク)

 

 

合理的配慮、民間義務付け前に 

障害者差別解消法の改正に伴い、スロープ設置など障害への合理的配慮が41日から民間事業者にも義務 付けられる。義務付けを前に土浦市役所で22日、市職員に向けて障害への理解を深めるための研修が実施 された。2017年から年に一度、毎年開催されている。今年は初めて精神障害をテーマにし、すべての課や 室から参加した約50人が当事者の話に耳を傾けた。 

講師は、精神障害の当事者が運営する「精神障害当事者会ポルケ」(東京都大田区)代表理事の山田悠平 さん(39)。同団体は2016年に発足した。「精神障害があることで経験する苦い経験や辛さも含めて、ひ とりで抱え込まずに言葉にしていこう!」を合言葉に、当事者同士が交流する場づくりや、精神障害に関 する調査、政策提言、学習会の開催など活発に活動している。 

山田さんは21歳で精神科を受診し統合失調症と診断を受け、4度の入退院を繰り返してきた。精神障害が あることで、言いたいことや抱えている悩みを周りと共有できなかったり、友人関係が途絶えてしまったりしたことがあった。当事者同士のつながりを作ろうと始めたのが「ポルケ」だった。見た目でわからな い精神障害について、地域の人にも知ってもらおうと関連映画の上映や写真展を企画し障害への啓発活動 もしている。 

対話通じ時間をずらした 

講演の冒頭で山田さんは、研修が午後2時から始まったことを「合理的配慮」の具体例として語った。市は 当初午前中の開催を依頼していたが、山田さんが時間変更を希望した。山田さんは「私には午前中は体調 面で難しいことがある。電車のラッシュにあたると、いいパフォーマンスを発揮できず支障が出るかもし れない。そこで時間の変更を相談した。すると『会場が取れたので午後にしましょう』と言っていただけ た。時間をずらすことも合理的配慮」と話す。山田さんから伝えられた特性に市が配慮を示し、当事者と 実施者が互いの対話を通じて、より適切に研修が行われる状態をつくり上げたと指摘する。 

事業者が障害のある人に対して、障害を理由に来店を拒否したり、サービスを提供する時間や場所を限定 するなど条件をつけることは、障害者差別解消法では「差別」にあたると禁止している。山田さんの体調に応じて市が研修時間を変更したことも、障害の特性に応じて時間を調整するなどルール・慣行の柔軟な 変更を行う合理的配慮に当たるのだという。 

一方で、事業者にとって過度の費用負担や物理的に実現不可能な場合は提供義務に反しないとされる。個 別の場面で判断が求められるが、「障害があるからと特別扱いはできない」「前例がない」と無碍(む げ)に拒むことは認められていない。そこで大事になることが「対話」だと山田さんは強調する。 

「合意的配慮ではプロセスが大事になる。障害者からの申し出への対応が難しい場合でも、できるかでき ないかを一方的に決めるのではなく、互いが持つ情報や意見を伝え合い、代わりになる手段を見つけてい くことが求められる。障害者と事業者がともに解決策を検討していくことが重要になる」 

権力勾配を意識して 

山田さんは、合理的配慮の民間事業所への義務化を控えたこの時期が「重要なタイミング」だと語る。 「合理的配慮には、障害者の側から『障害とはどういうものか』『このような配慮が必要』だと明らかに する必要がある。しかし精神障害には、偏見・差別の問題や中途障害であることもあり、当事者から言いにくいし、言語化に長けている人ばかりではない。今回の義務化は、改めて自分の障害をどう伝えて、ど のような配慮を望み伝えるか、私たちにとってエンパワーメントの機会だと思っている。過渡期ではある が、障害のない人と一緒に育まなければと思っている」という。 

「対話が必要だが、障害のある人の背景をしっかり理解してもらう必要がある。『権力勾配』という言葉 がある。例えば、一緒に話しましょうと言っても、力関係があることで対等に話せないことがある。行政 など力を持つ側に意識をしてもらえるといい。障害者団体を招いて勉強会をするということは他の自治体 にも広がってほしい」 

伝えやすい環境づくりへ 

今回の研修について市障害福祉課の酒井史人係長は「職員にとっては、ほとんど知らない内容も多かった と思う。当事者の方から直接実体験を聞くことでより伝わることが多いのではと考えた。さらに理解が進 む必要があると思う」と話す。同課の白田博規課長は「4月には合理的配慮の法的義務が民間事業者にも課 せられる。社会全体での対応がより必要になってくる」とし「窓口に来る方は車椅子の方ばかりではな い。見た目でわかりにくい障害のある方がいるという認識が共生社会を作る上で大事になる。当事者も見 た目でわからない分、『障害がある』と言えない人もいると思う。自分のことを伝えやすい環境をつくっ ていければ」と語った。(柴田大輔)

 

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