【ご報告】日本労働組合総連合会(連合)さんとの意見交換の機会をいただきました

障害者雇用に関心ある当事者が増えています。

2018年4月の障害者雇用促進法改正を受けて、精神障害者の障害者雇用のインセンティブが働いていることがその要因のひとつです。

当会でもお話会でワークショップを取り組んだり、学習会のテーマに挙げてきました。

一方で、中央省庁での障害者雇用水増し問題が代表されるように、障害者雇用に関する制度の実効性には大きな課題が積み残されたままとなっています。

それを裏付けるように、精神障害者の定着支援率は、他の障害種別と比較して低いという統計調査もでています。

他方で、障害者雇用に限らず、クローズ就労も依然として多いのが実情です。

個別な合理的配慮を越えて、職場全般で精神障害者が安心して働けるような仕組みづくりや環境整備も大事だと考えています。

先日、日本労働組合総連合会の雇用対策局の方々との意見交換との機会をいただきました。

労働問題のメインストーリームに精神障害者の雇用・労働環境のことを位置づけることの重要性についてお伝えできたかなと思います。

以下、資料でお渡ししたもの抜粋です。

 

1.労働環境における精神障害者像の位置づけ

各障害区分における障害者数の概数は、身体障害者は、436万人、知的障害者は、108万2千人、精神障害者392万4千人となっています。また、複数の障害を併せ持つ者もいるため、単純な合計にはならないものの、国民のおよそ7.4%が何らかの障害を有していることになります。(平成28年障害者白書)
精神障害の医学的診断も細分化されており、軽度の抑うつ状態から認知症まで、精神障害者像は広範囲に及んでいます。また、精神障害と、身体、知的障害の大きな違いは、障害の程度が固定化されておらず、周期的に症状が出ることもあり、周囲の理解が難しくなる傾向があります。
このように、精神障害者の数は障害者の累計で一定的な割合を保ちながらも、その特性上理解が難しいとされがちな傾向があります。

 

2.精神障害者の雇用・労働環境の困難さ

(1)クローズ就労(障害のことを秘匿にする働き方)

精神障害に対する偏見や差別の問題は根深く、本人の差別経験とは別にして、障害・病気のことを周囲に話す「対象」「タイミング」「程度」に考慮する者が、数多くいます。
本来であれば、障害者としてのサポートが必要な者に、適切なサポートが提供されにくい状況が構造化されています。

(2)オープン就労(障害者雇用を含む、障害者であることをカミングアウトした働き方)

①精神障害者の雇用施策はまだ遅れがある

厚生労働省が毎年6月1日に実施している障害者雇用の状況(6.1調査)によりますと、平成18年から29年までの障害者雇用の増加数は、知的障害が44,000人から112,000人と68,000人増加、身体障害は238000人から330,000人と95,000人増加、精神障害ははわずか2,000人だったのが、50,000人となっています。
他の障害区分と比較して伸び率が高いですが、絶対数が極めて低い数となっています。
現に、雇用されている精神障害者雇用の数は障害者雇用全体の約10%にしかすぎません。


②精神障害者の雇用定着率の低さ

単純な比較はできませんが、ここ5年ほどは新卒で就職した高卒者の離職率が17〜20%台、大卒者が11〜13%台で推移していることを考えると、障害者の離職率は高いといえます。
なかでも精神障害者の雇用定着率は、他の障害区分と比較して高いです。
(1年後の定着率は、身体障害が60.8%、知的障害は68.0%、精神障害は49.3%)。

 

<事例報告>

  • 障害に対する配慮が提供されない
    当会会員のAさんは、某大手電気機器会社に障害者雇用制度のもと就職しました。
    本人のプライバシー配慮のもと、障害者雇用であることが、人事課と一部の直属の上司のみが知る状況があり、同僚らには精神障害者であることを伝える場が提供されませんでした。
    Aさんは夕方になると気分の落ち込みが生じやすく、上長からの許可のもと、15分程度の休憩が認められていました。
    同僚からはAさんは「新人なのに生意気だ」「タバコ休憩が多い」と揶揄されるようになり、段々と休憩が取れない状況にありました。
    その後、体調調整が難しくなり、退職を余儀なくされました。
    このケースでは、障害者雇用促進法が定める障害への合理的配慮が実質的には提供されていませんでした。 

 

3.精神障害者の雇用及び労働環境是正に向けて

(1)人権モデルに則った環境整備

国連の障害者権利条約は、人権モデルに基づく法制度のパラダイムシフトを要請しています。
障害者の暮らしの課題は、本人の症状に帰責する障害の個人モデルという考えから大きく変わるものです。
一方で、精神障害者は、クローズ就労を選択せざるを得ない状況を鑑みるに、精神障害者の働きやすさを射程にして、職場の労働環境全体の整備が必要だと考えます。

 

(2)精神障害をもつ労働者の連帯の働きかけと啓発研修

近年の国際共同研究(Kesslerら2007)によれば、日本の国民で一生の間にうつ病、不安症など何らかの精神疾患にかかる人の割合は18%と報告されています。
潜在的な層も含めると、労働環境における精神疾患・障害のことは切っても切り離せない状況にあります。
復職の場合も再発リスクを抱えることもあり、経験の語りの場づくりや脱孤立をするために相互理解を図る研修の導入がさらに必要だと考えます。

以上、です。

意見交換の折には、「当事者の意見を聞くことは大切ですね」というメッセージもいただきました。

取り組みの研修のこともご関心をもっていただけたようです。

快くご対応いただいたことに、この場をお借りして、改めて御礼申し上げます。

ありがとうございました。

今後もさまざまな機関と連携・意見交換をしながら、当事者目線の仕組みづくりに寄与できればと思います。(文:山田)

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